Fernando Ribeiro e Fernanda Guerra / Fernando Ribeiro e Fernanda

Hi-Fi-Record2009-12-03

 大江田が受け取った友人女性からの散文をご紹介していて、今日は昨日の続き。


 EDITUSも聴き終わったので、せっかくだから鈴木さんのCDに変えてみる。なるほどね。彼女の音ってインパクトはないけど自分を素直に表現している。彼女が著書の中でも「シンプル」という言葉を何度も書いている。色んなものを削ぎ落として残るものは綺麗だ。14平米の狭い部屋に本当はピアノとギターと必要最低限のものだけを置いて生活したいと思って、毎週ちょっとずつ色んなものを捨ててるもんなぁ。あれ、これはちょっと違う感覚か。
 ちょうど先週ラジオの担当番組でゲストにいらした中山千夏さんを思い出していた。彼女も生活も趣味も音楽も人生も髪の毛もいらないものをちょっとずつ削っていて、シンプル。見ていて気持ちがいい。

 その日の夜は、近所に住む友人と食事をする予定になっていた。友人とは54歳、大学教授。普段は昆虫の絵を書いている。サイエンスアートの分野ではすごい人らしいが、単なる色々な話ができるおじさん。知り合った翌年からサックスを始めたので、私のライブにも出演してもらった。7時に東長崎、メキシカン料理。ビールが330円。今日も飲みすぎちゃうなぁ。友人は4万円の家賃で生活する私が100万円の歯科矯正をしているという話に「それ、いいなぁいいなぁ」。爆笑していた。

 一通り近況を語り合い、中南米の気質は日本人の音楽と合通じるものがあるのではないかというとりとめのない話題で盛り上がった後、今ベネゼエラに住む共通の友人が日本に帰国した際には一緒にライブをやる目標をたてて解散。
 酒の席の約束は信じちゃいけないと言うが私はそれを大事にしたいと思っている。

 日々過ぎていくこと。何が起こっても毎日同じ時を刻んで、時間は絶対に流れていく。明日はまた起きて、食事をして、仕事をする。時には旅行に出かける日もあれば、一日中寝ている日もあり。感情を抜きにすれば出来事というのはごく自然でシンプルである。
 お尻に火をつけて、というタイトルは鈴木さんが発案した言葉ではないだろうなと思っていたら、あとがきにそう書いてあった。
 秋に中南米でも行ってこようとお尻に種火がついた。



 鈴木亜紀さんの本「お尻に火をつけて」は、たびたびのライヴの際に彼女が配っていた手書きの冊子「さくらえび通信」をまとめたもの。鈴木さんの生まれ故郷、焼津で一年の数ヶ月のみ漁が許される地場のエビが、さくらえび。中身には彼女の旅日記。タイトルと中身とは余り関係が無いようで、あるようで。

 Editusを聞いて、鈴木亜紀さんのCDを聞いて。その次にこれはどう?と勧めたくなるのが、フェルナンド・ヒベイロ&フェルナンダ・グエラの音楽。
 ポルトガルのファドは、これまではポルトガル発祥の音楽と考えられていたのが、このところの研究の成果で、ブラジル発祥の音楽がポルトガルに飛び火して発展したものとされるようになったという。
 かつて世界に冠たる貿易国家だったのだから、ボルトガルで命を長らえている音楽には、ポルトガル人が地歩を得た世界の各地の音楽が混ざり込んでいてもおかしくないのかもしれない。

 フェルナンド・ヒベイロ&フェルナンダ・グエラの音楽には、南米的な陽光と日陰を感じる気がするのだか、さてどうなのだろうか。

 ところで「秋に中南米でも行ってこようとお尻に種火がついた」彼女、本当にヴェネゼエラに出かけてしまった。
 ことの顛末もまた文章で読みたいとお願いしている。
 もしかすると、いましばらくして、便りが届くかもしれない。楽しみに待っていたいと思う。(大江田信)


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