Vincent Bell ヴィンセント・ベル / Airport Love Theme

Hi-Fi-Record2009-12-11

The Cool School 98 帰ってほしいの その2


仲の良いお店の主人に紹介されて
ディーラーの家までやって来たまではよかったが、
「ちょっと出かけてくる」と言い残していなくなった彼が
待てど暮らせど戻ってこない。


しびれをきらして
母屋に出向いた大江田さんが見たのは
ソファーにうつぶせで横たわる老人の姿だった!
もしや? 死んでる?


ここまでが前回のあらすじ。


「今度は松永くん、様子を見てきてよ!」
めったに店主命令を出さない穏健な大江田さんが
さすがにちょっとおびえたふうに言うので
渋々とぼくも母屋に向かった。


ソファーにうつぶせ?
スーツ姿で?
ほんとかよ?


大江田さんの証言をうたがいつつ、
その反面で
怖くない怖くない怖くないと
おまじないのように繰り返す。


裏口のドアを開け
こわごわと中に踏み込んだ。
足音を立てないようにソファーのある居間へと向かう。


うわ!


次の瞬間、
身体が硬直して
思わず声が出そうになった。


その老人は確かにいた!
しかも
今度は外を向いて立ち上がって
窓に両手を当てているではないか!


うわわわわ〜!


何とも言い難い恐怖におそわれ
気づかれないように退散した。


大江田さ〜ん!
死体じゃなかった!
ゾンビになってました!


カクカクと硬直したままガレージに駆け込んできたぼくを見て
大江田さんは「ほら見たことか」と得意げな顔をしたが、
寝てたんじゃなくて今度は立ってたんですと説明すると
泣きそうな顔になった。


「ウソでしょ?
 あの状態から起き上がったとはとても思えないよ」
「ウソだと思ったら
 もう一回見てきてくださいよ!」


こうなると
もう完全におとなの肝試し状態だ。


ぶるぶるっと寒気がした。
いつの間にか上着が必要なくらい
あたりは冷え込みはじめていた。


どこへ行ってしまったのか、
ディーラーはまだ帰ってこない。(この項つづく)


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大江田さんも先日報告していたけれど、
年内最後の買付に行ってきた。


荷物が到着したので
今日からひもといていますのでどうぞよろしく。


帰りの空港で
バカラックの「アルフィー」が流れていた。
誰のカヴァーかわからなかったのですが、
空港にとてもよく似合う選曲だなと感じ入ってしまい
手荷物検査の列を離れて
しばらく立ち止まって聴き続けたくなった。


60年代の香りを残す
その空港の古い内装に
アルフィー」は絶妙に似合っていた。


ぴちゅん、ぴちゅんと
水たまりで反響したような不思議なエフェクトのギターで
名手ヴィンセント・ベルが弾く
「エアポート愛のテーマ」も
あの空港で聴いたら本当に気持ちがいいだろう。


アルフィー」は収録されていないが、
その代わりにバカラックが愛娘に捧げた佳曲「ニッキ」が
ここにはおさめられている。(松永良平


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