Bob Gibson ボブ・ギブソン / Funky In The Country

Hi-Fi-Record2010-01-20

 60年代シカゴのフォーク・シーンをとらえた写真本の紹介を得た。 お持ちの方にちょっと貸していただいた。


 ペラペラとページをめくると、そのすべてが初めて見る写真だった事に、まず驚いた。フォークシーンを捉えた写真を見ていると必ずと言って良いほど、今までに見た事のある写真が含まれていた。それが、ここにはまず無い。それに加え、ステージを遠方から撮影するのではなく、アーチストに近い場所で撮影されていること、被写体のアーチストたちが写真を撮られていることに気を留めていない事にも驚かされた。アーチストたちが自然に振る舞っている。このカメラマンは内側の人なのだなと思った。


 そこにあった一枚に目が止まった。
 シカゴのフォーク・クラブ、ゲイト・オブ・ホーンでのライヴの最中に撮影されたボブ・ギブソンの写真。
 ボブ・ギブソンは、ゲイト・オブ・ホーンをはじめとするシカゴのフォーク・シーンを経て、60年代の初頭にはフォーク界のスターの一人に数えられるまでに至ったアーチスト。ゲイト・オブ・ホーンは、後にボブ・ディランをはじめとしてザ・バンドなど数多くのアーチストのマネージメントを手掛け、ベアーズヴィル・レコードの創始者でもあるアルバートグロスマンが運営していたライヴ・ハウスだ。ここがふたり共に音楽キャリアの出発点だった。


 ゲイト・オブ・ホーンの店内で撮影された映像は、なぜかあまり見ない。そのせいもあるのかもしれない。
 つつましいたたずまいが、いかにもボブ・ギブソンという風だったことも、あるだろう。彼の奏でる音楽と響き合っている。


 これはハイファイに在庫しているボブ・ギブソンのアルバムの一枚。フォーク・ブームが落ち着いてしばらくした1974年の作品だ。
 かつて近しく音楽を共にしたフォークの仲間達が、それぞれに道を歩き始めている74年。フォークをやめて、ロックに進んだ者が多い。彼自身もロック寄りのアルバムを発表したこともある。散り散りバラバラになった。


 そうした時期に地元シカゴの小レーベルから発表した作品である。中身はと言うと、かつての日々を思い起こさせるシンプルなフォークアルバムだ。まるで自身のルーツを確認するかのように響く音楽。職人肌の人なのだろう、愚直なその姿勢がぼくにはまぶしい。(大江田信)


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