Keith Carradine キース・キャラダイン / I’m Easy

Hi-Fi-Record2010-01-22

The Cool School 112 あなたの知らないカントリーの世界


アメリカの平均的な中古レコード屋さんに行って
一番商品の数の多いジャンルは
何だと思われるだろう?


ロック?
ジャズ?
それとも
クラシック?


正確な統計ではなく
ぼくの経験から見た判断だが、
おそらくそれは
カントリーではないだろうか。


もちろん
今までに発売されたレコードの枚数で言えば
クラシックや
それこそロック全般という意味では
カントリーは及ばないはずだ。


だがそこに
ひとつの落とし穴がある。


クラシックやロックには
マニアを興奮させ
ビギナーを入門させる
中古盤としての人気や市場価値がはっきり存在する。


適度に売れてゆくから
商品の数量としては
お店にそれほど滞留しない。


ところが
カントリーのレコードは
一部のヴィンテージな作品を除けば
マニアックな価値が認定されているものがとても少ない。


だから
お店の中で
売れ残ったカントリーのレコードが占める面積が
とても大きなものになるというわけだ。


だがこの事実は
裏を返せば
今までカントリーというジャンルが
ディーラーたちにちゃんと掘られてこなかったことを
物語ってもいる。


ぼくたちだってそうだ。
チェット・アトキンス
スキーター・デイヴィスは
ハイファイでも人気があるので
そこはチェックするけれど、
あとは正直言って
時間との闘いを考えると
まともに取り合ってはいられない。


アメリカ中古レコード業界における
最大の未踏峰
いつもぼくたちの目の前にあるというわけだ。


そう言えば最近、
アメリカのリイシュー業界では
カントリーの世界の中での
アウトロー的な存在感を放つミュージシャンを
新しい視点でとらえなおす編集盤なんかもリリースされるようになった。


男尊女卑的なマッチョイズムが今なおあるかと思えば、
不倫や背徳の歌など
あんたたちホントにキリスト教徒かいなと
思ってしまうようなテーマの歌も多い。
それに
ぼくたちが聴いているシンガー・ソングライターにだって
実はアメリカでは堂々カントリー扱いという例も少なくない。


またナッシュヴィルという土地柄には
実はカントリーだけじゃなく
ジャズもソウルも色濃く根付いていて
そういったエッセンスを持つ意外性あふれる傑作だってある。


まだまだ
ぼくたちの知らない、
あるいは
名前は知っていても素通りしてきた逸材が
ひょっとしてまだ眠っている。


そう推察させるに足る
状況証拠は少なからずあるのだ。(この項おわり)


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ここまで書いて
紹介するのが「ナッシュヴィル」のサントラだったら
完璧だったんだけど、
先日売れてしまったらしい。


というわけで
その主題歌を歌って
めでたく歌手デビューを果たしたキース・キャラダインのアルバムにしよう。


ただし
ナッシュヴィルじゃなくて
LA録音だけどね。
中身は最高。(松永良平


試聴はこちらから。