Joni James ジョニ・ジェイムス / Award Winning Album Vol.2

Hi-Fi-Record2010-01-23

 アルバムのB面冒頭に収められているのが「You Belong To Me」。


 「You Belong To Me」は1950年代初頭に書かれたカントリー・ソングでオリジナルの歌唱はスー・トンプソンという。ほどなくカバーしたパティ・ペイジのヴァージョンがヒットして1952年の夏から秋にかけて全米チャートの最高4位を記録している。
 その後にジョー・スタッフォードのカバー・ヴァージョンもリリースされ、24週間にわたってチャート・インしたというから、半年に渡る大ヒットとなった。このほかドゥーワップのデュプリーズやポップ・ボーカルのディーン・マーティンもカバーした。
 

 今では「You Belong To Me」というとジョー・スタッフォードの当たり曲とするのが通例だ。
 面白いと思うのは、カントリー・ソング出自のこの曲が、カントリー・シンガーによるカバーをすぐに思い出すことができず、その他のジャンルのシンガー達によって多くカバーされていることに思い当たる点だ。
 カントリーから生まれたポピュラーヒット、ということになるのだろう。同種の先輩格にあたるのは、パティ・ペイジの「テネシー・ワルツ」(オリジナル歌唱版のレコーディングは、カントリー・シンガーのロイ・エイカフ)だろうか。


 詳しく検証していないのだが、1950年代はカントリー・ソングのポピュラー化が急速に進んだ時代だという史観があって、こういう例をみると、確かにそうかもしれないと思い当る。

 
 カントリーのポピュラー化という点では、チェット・アトキンスらを中心としたナッシュヴィルの音楽動向が中心になるのだろうが、同時に気になるのはハンク・ウィリアムスの作品をポップに歌ったコニー・スティーヴンスや、もっと後年になるがLAの敏腕ミュージシャンの手を借りてビル・モンローのアンクル・ペンのカバーをしたゴールディー・ホーンなどのポップに抜けた仕上がりだ。マリア・マルダーが、ソロ・デビュー・アルバムで取り上げたドリー・パートンのカバーもよかった。亜種というか、変種というか、いわばよそ者が採り上げてカントリー・ソングを見事にねじ伏せたこうした成功例のいくつかに、とても魅かれる。

 
 で、ジョニー・ジェイムスが歌う「You Belong To Me 」。
 この曲のムーディな側面が浮かび上がる仕上がり。ジョー・スタッフォードのあの声が耳に残っているせいか、この時28歳のジョニ・ジェイムスのヴォーカルが、ずいぶんと可愛らしく甘く聴こえる。(大江田 信)
 


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