Street People ストリート・ピープル / Thank You Girl

Hi-Fi-Record2010-01-25

The Cool School 113 レコード定食


ハイファイでぼくが買付に行き始めて
まだ間もないころ、
買付用の資料ノートに記されたレコード屋リストの中に
妙な名前を見つけた。


ノートには
毎回そのとき訪問する予定の都市にある
レコード屋の名前と住所、
そして以前に訪問したときのABC段階での評価と
簡単なコメントが記してある。


そのときノートに見つけた名前は
レコード屋にしては明らかにおかしかった。


ジョーズ・タコ・ラウンジ・アンド・サルサ


それがその店の名前。
“ラウンジ”や“サルサ”はかろうじて音楽に関係がある気がするけど
ラウンジ・ミュージックとサルサ・ミュージックの専門店なんて
聞いたことない。


「ごめんごめん、それはレコード屋じゃないよ」
大江田さんは笑いながら答えた。


それはその街で人気のメキシカン・レストランの名前だった。


「これから行くレコード屋の近所にあってね、
 ひとしきり買付をしてから
 そこで昼飯を食べるわけ」


たっぷり買付をしてから
見つけたレコードのことを思い出しながら摂る食事。


さしずめ
レコードをおかずに主食を食べるようなもので
レコード定食といったところか。


そして
ハイファイの長い買付の歴史の中で
良いレコード屋の近所にある
ナイスなレストランやピザハウスは
レコード定食が食べられる店として
ノートに記されてきたというわけだ。


最近残念なのは
ぼくたちの大好きなレコード屋のいくつかがなくなったり、
ビジネスに対する情熱を失ってしまったりしていることだ。


ジョーズ・タコ・ラウンジ・アンド・サルサ」の近くにあった
素敵なレコード屋も商売をやめてしまった。
ぼくたちはレコードの収穫と一緒に
あの美味しいタコスも失ったのだ。


ジョーズ」のレコード定食に対する評価も
ノートには記してあった。


もちろん「A」だ。(この項おわり)


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何か食べ物に関係するレコードがないかと思ったら、
レコードそのものではないが、
バブルガム・ミュージックというジャンルが
60年代後半のアメリカにはあった。


ルパート・ホルムズが
ソングライターとして修行を積んだストリート・ピープルは
その流行の中にいたグループだ。


ところで
「バブルガム」とキーボードで打って
何気なく変換して驚いたことがある。


何とその変換が
「バブルが無」になっていたのだ。
今日はこの文章にもオチが無い。(松永良平


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