Ricardo Santos And His Orchestra / Holiday In Nippon

Hi-Fi-Record2010-01-30

The Cool School 115  日本の穴場


「日本盤のきれいなジャズ・レコードを
 仕入れてくれてありがとうな」


カウンターで老人客が
店の人間にそう語っているのを耳にした。
ウェストコーストの瀟洒な街にあるレコード屋での話。


日本のジャズ・ファンは
何かとオリジナルにこだわって蒐集をするが、
ここアメリカでは
実は日本盤で再発された
ブルーノートのLPなどの人気がとても高い。


彼らの言い分もうなずける。


だって
オリジナルのきれいな盤なんて
とんでもない値段で売買されているし、
なまじ安い盤を探しても
ジャケはボロだし
ノイズもバチバチいう。


それなら
丁寧な仕事で復刻された
日本盤のLPを買う方が理にかなってるのだと。


だが問題は
どうやって海を越えて仕入れるかだ。
どうやらこの店には
日本盤を仕入れるルートがあるらしい。


その疑問を直接彼にぶつけてみた。
するとその答えは意外なものだった。


「いやあ、実は先週までオーサカにいたんだよ」


つまり彼自身が
直接日本に出向いてLPを買っているようなのだ。


ではいったい
日本で彼がレコードを見つける穴場は
どこなのだろう?
そういう意味合いで
日本のどの街が好きと訊ねた。


彼の答えは速かった。


「九州だ」


え?
ぼくの実家は九州だけど
あそこにそんなジャズのいい店があったかな?
それともジャズ・ディーラーの知り合いがいるのかな?
九州のどこにそんないい場所がある?


「そうだな、
 まず湯布院だ。
 それから黒川……それからそれから……」


ちょっと待った。
それってレコードの話じゃなくて……。


「ハハハハ。
 そうなんだよ、
 おれはジャパニーズ・オンセンのビッグファンなんだ!」


なんでも彼の奥さんは日本人で
毎年里帰りを兼ねて日本を訪れるたびに
温泉、それも秘湯の魅力に彼は取り憑かれ、
今では全国の秘湯を求めて旅をしているらしい。


レコード屋のある場所の話かと思ったと言ったら、
彼は首をかしげながら苦笑いした。


「ハハハハ、昔はドルが円に対して強かったから
 そのころはいっぱい買ってたよ。
 今は90円とか89円だろ?
 なかなかその為替だと日本では気楽に買物出来ないよね」


そう言いながらも
最後のしめくくり文句はいかしてた。


「でもね、
 おれは負けないよ。
 オンセンのおかげで
 年々心も身体も強くなってるからね、ハハハハ!」(この項おわり)


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今日の話だと
レコードはこれしかないすね!
以上!(松永良平


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