Adamo アダモ / Olympia 67

Hi-Fi-Record2010-02-13

 AMラジオ好きには、格好の話題がこの週末に飛び込んできた。


 首都圏と関西圏のキー局の13局が、通常の放送と同内容のものをインターネット上で配信するという。複数のメディアで同時放送する手法をサイマル放送というそうで、ここ数年、地域のFM局がその種の放送を行ってきた経緯はあるものの、ラジオ放送の王道ともいうべきAMが長期間にわたって本格的に運用されるは、日本では初めてのことらしい。
 ネット上では、本放送にくらべて2秒ほど遅れて音が出ることになるが、それ以外には全く同一内容のものが放送される。CMも音楽にも一切手が加わらない。


 ただしこれはこの9月までの時限的なもの。試行をしたのちにどのようにして本格展開するのかは、まだこの先の決定を待たなければならない。
 これと同時にAMラジオには、この数年先に、またひとつ新たな局面が待ち構えている。
 テレビの地デジ化が終了した後のこと、テレビが使っていた電波帯域がそっくり空いたのち、ラジオがその帯域を使用することとなる。かくして動画や静止画、文字情報などを併用したラジオが可能となる現実がやってくる。携帯電話を用いてラジを聞くことが出来るかもしれない。来るべきラジオにどのような未来があるのか、審議会で議論が始まった。


 かつてぼくがレコード会社でプロモーターをしていた頃、もはや20年以上もまえのことだけれども、AMラジオはレコードの販売促進において、最も競争の激しい現場のひとつだった。ラジオ番組で担当するアーチストのシングル盤をかけてもらうことに、文字通りに心血をそそいだものだ。
 このところのプロモーションを巡るラジオの現場にはいささかうといものの、かつてほどにAMラジオが期待されていない現実を感じる機会は、少なくない。
 つい先日、とある都内の大型電気店にラジオを買いに行った際に、店頭にほとんどラジオが置かれていないことに、いささかの驚きを感じた。いつくか質問をなげかけた店員氏にも、熱意を感じなかった。渋谷の駅前店だったからか?


 日米問わず、かつてAMラジオは、音楽プロモーションの文字通りの戦場だった。
 モーター・シティ、デトロイトで音楽レーベルを立ち上げたベリー・ゴーディ・ジュニアが、仕上がった音源を車のカーラジオを用いて試聴し、その可否を判断したと聞く。ラジオで放送された際の聞き映えを確かめたのだろう。


 僕自身もAMラジオから流れる音楽にひかれて、ファンになった口だ。ラジオが好きだったのか、音楽が好きだったのか、あの頃の僕のアイドルのひとりがアダモ。
 アダモと言えば、やっぱり「雪が降る」。
 ここ数日のみぞれまじりの東京の天気には、ぴったりの選曲かもしれない。(大江田信)


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