Los Lobos ロス・ロボス / La Pistola y El Corazon

Hi-Fi-Record2010-02-17

 不勉強ゆえ、ロス・ロボスにこんなアルバムがあるなんて、全く知らなかった。


 コンディションを確認するために、ハイファイの店内で流されていた音を聴いて、思わず心がつかまれた。
 ちょっと一瞬、なんの曲だか分からなかった。あれ、これ、もしかしてあれ、ラ・ビキーナだっけとつぶやきながらカウンターに近寄ったら、松永クンが「Que Nadie Sepa Mi Sufrir」を指差して、これですよと言った。



 それはエディット・ピアフ「群衆」のメロディだった。「愛の讃歌」などシャンソンの偉大なる先達として知られるピアフが、渾身の歌唱で歌った「群衆」の素晴らしさはちょっと言葉に尽くしがたい。ピアフの歌には、魔力のような力がある。ピエール・ポルトの演奏した「群衆」もいい。



 調べてみると、アルゼンチンを旅行していたピアフがこのメロディを聞いて惚れ、自国に戻ってフランス語の歌詞を付けて、歌ったということだった。
 つまり「Que Nadie Sepa Mi Sufrir」がオリジナル。1930年代に書かれたものという。それをロス・ロボスが原詞のままにカバーしたもの、と知った。
 ピアフの「群衆」の本家本元ということか。


 
 ガットギターの響きとともに、スペイン語で歌われる8分の6拍子による哀愁のメロディにどうも弱いらしいと、最近になって気づいた。その種のメロディに、体が反応する。
 「群衆」のメロディと気づく前に口にしていたラ・ビキーナも8分の6拍子。どうやらメキシコで古くから知られた曲で、今や南米スペイン語圏の各国では知らぬ者が無いほどにポピュラーだと言う。
 「Que Nadie Sepa Mi Sufrir」の方も同様に、アルゼンチンのみならず広く南米一帯で愛されている曲らしい。
 8分の6拍子のマイナー・メロディ。どこかしら悲劇的な印象がある。そんなところが好きなのかもしれない。(大江田 信)


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