Werner Muller And His Orcestra / Percussion In The Sky

Hi-Fi-Record2010-02-19

 このところまとまってウェルナー・ミューラーのレコードを聞く機会があって、改めて彼の仕事振りの面白さを感じている。


 ブラス・セクションの扱いがとてもうまい。時代のアップ・デイトなポップ・ヒットを扱わせても、巧みにひとヒネリしている。メロディを率直に歌い上げつつ、同時に対位して進行するメロディやその裏で響くリズムなど、実に大胆に配している。などなど、どうしてこんなに聞いていて聞き飽きないのか考えるうちに、するすると答えが並ぶ気がする。


 最もびっくりしたのが、ハリー・ベラフォンテの「デイ・オー」。速いせっかちなテンポで、メロディがくるくると演奏される。やや冗長な原曲が、こんなに様変わりをするのかと驚いた。マック・ザ・ナイフの遠くからやってきて去っていくようなアレンジも愉快。


 空に浮かぶ星やら月などにちなむ曲をひとまとめに集めて、大胆なパーカッションで色付けしたこのアルバムも、アレンジに驚かされた一枚。
 選曲、ステレオ効果、空から星が降ってくるような遊び、変幻自在なめまぐるしさなど、聞いていていいちいち面白い。


 カテリーナ・ヴァレンテやコニー・スティーヴンスのバックで見せる才気にも感心させられるが、なにより聞いていて気持ちがいいのは、彼の音楽には明るいユーモアが宿っているからだ。
 もしかして子供の頃から、結構ないたずらっ子だったんじゃないかと思わせる、そんなひょうきんさが。
 思わず耳をそばだてている僕のことを、ステージのカーテンの袖からにんまりしながら見ている彼がいるような気がする。(大江田信)




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