Werner Muller And His Orchestra / Plays Leroy Anderson

Hi-Fi-Record2010-02-24

 ウェルナー・ミュラーについての続き


 自身がトロンボーン奏者だったことからかブラスの扱いが上手く、ブラス系の響きが耳に残る力強いサウンドの印象があるウェルナー・ミューラー。1950年代の初期からドイツのラジオ局の専属音楽監督を務めており、そのころの放送音源を聴いてみても、なるほどブラスの扱いの上手さが際立つ。一糸乱れぬとは良く言ったもので、アンサンブルがとてもよくコントールされているし、時おり盛り込まれるソロ楽器の演奏も切れ味が良い。
 よっぽど厳しいコンダクターだったのだろうと想像するが、当時の宣伝用の写真を見ると気難しさのかけらも無く、あらん限りのひょうきんさ一杯でレンズにおさまっていて、なんともサービス精神豊かな人だったのかとも思わされる。



 かつて小中学校の運動会で必ずと言って良いほどに使われた「トランペット吹きの休日」で馴染んで来たからか、ルロイ・アンダーソンのメロディには強い親しみがある。
 素晴らしく純度の高いルロイ・アンダーソン・メロディ集がこれ。
 トランペットをはじめとするブラスの鮮やかな響きはもとより、ここではストリングスの響きも巧みに表現されている。ルロイ・アンダーソンが書いた元々のスコアにそれほどの手を加えていないということもあるのかもしれないが、それでもこの人なりの工夫がある。なにかやらなければ気がおさまらないと言うべきか、例えば「ブルータンゴ」のイントロに加えられた手拍子の鮮やかな効果には、驚かされた。



 彼がとりあげるメロディは、多く同時代に知られているヒット・ソング。
 聴衆が馴染み深いメロディに自身のアイデアを盛り込んで、それが楽しまれている様が、またうれしかったに違いない。上品にして、いたずらっこ的なセンスに満ちたアレンジャーなのだ。(大江田信)



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