Rosemary Clooney ローズマリー・クルーニー / Swing Around Rosie

Hi-Fi-Record2010-02-26

The Cool School 127 クール・スクール・イン・ジャパン その6


ようやくつかんだ4階での仕事。
それは中古フロアで
毎日買取の受付をしたり
販売をしたり
見たことのないレコードをさわったり
聴いたことのないレコードを聴いたり
そんな夢のような仕事だった。


もっとも
BGMの権限は奥で働いている
査定担当のバイト・チーフのEさんが握っていた。


自分が気持ち良く仕事するためにBGMのレコードを選ぶ。
えらくなればそれが出来るぞと
ぼくは学んだ。


さいわいにもEさんの趣味は
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド
初期のストーンズだったので
ぼくにとっては全然苦痛じゃなかった。


Eさんが昼休みで外に出れば
その時間は自分の聴きたいと思うレコードをかけた。


4階での仕事は
ただそういうことだけが楽しかっただけではなく
実際にすごく勉強になった。


何をいくらで買取して
いくらで店頭に出し、
またそれがどういうお客さんに
どのように売れてゆくのか。


それを毎日見ているだけで
実感出来ることは計り知れない。


当時はまだ今とはトレンドが随分違って、
P-ファンクなんかが高嶺の花で壁を飾っていた。


日本のロックで人気があったのは
東京ロッカーズと呼ばれた一連のバンドのレコードや
スターリンやギズムなどハードコアパンクの自主レコードで、
はっぴいえんどシュガーベイブ
どの店にも売っている普通の中古盤に過ぎなかった。


シンガー・ソングライター
のちにソフトロックと呼ばれるようなレコードは主力とは言えず、
ハーパース・ビザールのセカンドが売れなくて
長い間棚に残っていたのを覚えている。


ぼくが働くようになって最初に行なわれた中古盤セールは
ローリング・ストーンズのレア盤セールだった。


朝から十数人が並び、
整列したまま4階まで階段をのぼり、
「開店です!」の合図とともに全員がダッシュした。


そのときに
「ナスティ・ミュージック」という有名な海賊盤を入れていた木枠が
枠ごと分捕られて破壊されてしまった。
あの木枠は壁に打ち付けてあったのだから、
あれを引きはがしたのは相当な力だったと思う。


今から考えると
とてもレア盤とは言えないようなものまで飛ぶように売れていた。
激しいけれど朗らかでもあった。


情報が細かく行き届くことだけが
決してみんなを幸せにするわけでもないなと
ぼくが今でもときどき思うその要因のひとつが
こういう体験にあるんじゃないかと思ったりもする。(この項つづく)


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ミュージカル「TALK LIKE SINGING」で
アメリカ50州の名前を読み込む
その名も「50州」という歌を聴いた。


アメリカの50州には
きっとどんな州にでも一曲は
名前を読み込んだ歌があるはずだ。


ノース・ダコタとか
アイオワにもあるのかと訊かれると
ちょっと自信がないけれど
昔、全米50州をツイストするというレコードを扱ったことがあるから
きっとそういうものの中にあるだろう。


ミシシッピーなら、
ローズマリー・クルーニーがこのアルバムで歌う
「ムーンライト・ミシシッピー」を選びたい。


このメロディ
このコード進行、
何故だかわからないが
どうしようもなく抗えない。


ホーギー・カーマイケルの
「メンフィス・イン・ジューン」に似ているからかな。


ふっと落ち着きたいときに
聴くのです。(松永良平


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