Connie Stevens コニー・スティーヴンス / Hank Williams Song Book
渋谷駅からハイファイに向う途中、耳していた「I've Got My Love To Keep Me Warm」の歌詞に、ふと気持ちが動いた。
ちょうど「Off with my overcoat, off with my glove, I need no overcoat」と歌われる箇所だ。
とにかく今日のお昼の渋谷は暖かかった。
「コートを脱いで、手袋を外して」という言葉がピッタリ、そんな日射しに溢れていた。
何事か雑談をしながら昼食に向うサラリーマンたちも、もう春休みが近いのか、学校帰りの女子高校生たちも、ついこのあいだまで着ていた重たいコートを脱いで、ずいぶんと身軽に歩いているように見えた。
実地学習ということなのか、街の様子を先生と共に観察して廻っているイギリス人学校の小学生たちの中には、半袖の子供もいた。
何だか、気持ちがちょっと軽くなる風景だなと思った。
それにしても「I've Got My Love To Keep Me Warm」って、こんな時期のことを歌った歌だったっけと思って歌詞を見直したら、たとえのひとつに「つらら」が登場したりと、もっと寒い時期のことを扱っていた。
何のことはない、歌の主人公は、自分のものとした「愛」によって、コートやセーターや手袋を必要としない程に、あたたかなのだった。しかも彼女をあたためる炎は、もっと燃え盛ろうとしている。
「コートを脱いで、手袋を外して」と歌う前、ここに至る前半部分では、冬の寒さと燃える愛の事を説明していた。
ぼくにはそっちは、耳に入っていなかった。
歌の歌詞にふと気がつく時って、気分によるものなのかなと思いつつ、いや、もしかしたら歌手の声の持つキャラクターなのかもしれないと思い直した。ぼくが聞いていたのは、コニー・スティーヴンスの歌う「I've Got My Love To Keep Me Warm」。スタンダードという感じがしない、彼女と同時代のヒット・ソングを歌っているかのような感触のヴァージョンなのだ。
春先のような気分、と言い直しても良いのかもしれない。
清々しい気分にしてくれる歌声。
検索してみたら、ハイファイに在庫しているコニー・スティーヴンスの複数枚のアルバムの一枚がこれだった。
彼女が歌うとハンク・ウィリアムスのカントリー・ソングがまるで違って聞こえる。不思議で、そして素敵だ。(大江田信)
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