Connie Stevens ハンク・ウィリアムス / Hank Williams Song Book

Hi-Fi-Record2010-03-04

 いささか前のこととなるが、「共同体が変化するときは、まれびとと呼ばれる共同体の利害を持たない人間が外からやってきて、法をつくったり法を変えたりすると社会学では言われている」と、夕方のラジオで宮台真司が述べていた。


 「まれびと」とは、来客あるいは客神をあらわす語として古くからあるということなので、不用意に意味を違えて使っていい言葉ではないのかもしれない。宮台真司は数年前のニッサンにおける社長ゴーンの一連の行動をさして、説明していた。この一節を聞いて以来、「まれびと」と考えられる存在が気になるようになった。音楽の世界にも、「まれびと」がいるのではないか、と思うようになった。


 古くからの旧弊を打ち破るのは、その世界で育ったものには難しいというのは、事実だろう。
 こうして考えているときに、ぼくの頭に浮かぶのは、アメリカのカントリー音楽の系譜だ。
 例えばエミルー・ハリスやギリアンウェルチは、カントリーの世界に片足を突っ込みながら、もう片足を外に踏み出している、あるいは踏み出そうとしている。オルタナティヴとは、そうした立ち位置のアーチストに与えられる誇らしい呼称なのだろう。


 「まれびと」の自覚すらなく、カントリー音楽の多数の聴衆を横から盗み取るかのように、さっと登場する鮮やかな企画作品がある。その切り口が鮮やかであればあるほど、感嘆してしまう。そんな好例としてゴールディー・ホーンがアルバムで取り上げたビル・モンローの「アンクル・ペン」を書いたことがあるが、そういえばコニー・スティーヴンスのハンク・ウィリアムス・ソングブックもそんな手触りだなと、改めて気づいた。


 ちなみにゴールディー・ホーンも、コニー・スティーヴンスもテレビ・タレント出身。音楽専門のアーチストではなく、タレントなどセレブリティのアルバムにそうした好例を見つけ出せるということなのか。
 だとするとそれは、制作スタッフの勝利なのだろうし、それがポップスという音楽なのだろう、と思う。
 なんてことを考えつつ、コニー・スティーヴンスのアルバムを聞き返すと、やっぱり楽しい。
 楽しいハンク・ウィアムスが許されるのかどうか、わからない。許されないのかもしれないが、でも楽しい。
 というわけで、昨日と同じアルバムのご紹介。(大江田信)


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