Gary McFarland ゲイリー・マクファーランド / The In Sound

Hi-Fi-Record2010-03-07

The Cool School 131 クール・スクール・イン・ジャパン その10


Cさんが無事に社員として入社が決定し、
店舗を移動することになった。


社員希望で入ってきたひとは
正式に入社すると別の店舗に
社員として赴任する。


都内に多くの支店を持つこのレコード店
そのことは古くからの不文律になっているらしかった。


大柄で人懐っこく
陽気で人気があったCさんの移勤は
「江戸情緒研究会」のぼくたちに
さびしい影を落とした。


「まあ、いなくなるわけじゃないからさ、ガハハハハ」


いつものように閉店後に飲みに行くと
Cさんはそう言って笑うのだが
ぼくの心中は穏やかではなかった。


そのころになると
4階のバイト・チーフ的存在だったEさんが休みの日は
ぼくが買取を担当するようにもなっていた。


入って半年で
いっぱしの玄人みたいな顔をして
自分よりずっと歳上のお客さんの持ち込むレコードを
ああでもないこうでもないと審査していた。


おそらく
Cさんがいなかったら
ぼくは数日でこの店のバイトを辞めていたはずだったのに。


Cさんからしたら
見るに見かねて声をかけてくれたというのが実情だろうが
話してみると
ぼくたちは年齢差を感じないほど話題も気もあったのだった。


豪快なCさん
むっつりなぼくという
性格的には対称的なところもおもしろかった。


ウルトラセブン」の欠番となっている第12話を見せてくれるというので
千葉のご実家まで遊びに行ったこともあった。


若かったぼくには
Cさんの存在は
自分の好きなことを
好きなまま生きられるという人生の最良の例のように思えた。


本当を言うと
Cさんだって
バンドのドラマーとして生きていきたいという夢があったはずで
同じ音楽の世界であるとは言え
レコード屋という職業を最良と考えていたかどうかはわからない。


だけど
世間知らずだったぼくには
当時そこまでをおもんばかる力はなかった。
むしろ自分勝手に
Cさんがそばにいてさえくれれば
それだけ自分の力も向上してゆくような気がしていた。


この店で
やりたい仕事をやっていけそうだという手応えを、
毎晩のようにお酒を飲みバカ話をしながら
Cさんに「これでいいんですよね?」と
ぼくは無言で確認していたのだ。


送別会の日程が決まったという報せが届いた。
会場は
あきれるほどCさんと酒を飲んだ
いつもの居酒屋だった。(この項つづく)


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昨晩は
「GARDEN」@恵比寿tenementでした。


お越しいただいたみなさま、
DJのみなさま、
tenementのスタッフの方々、
どうもありがとうございました。


特にゲストで参加していただいたお二方に謝辞を。


矢島和義さん、
硬派に自分を押し通す選曲、最高でした。
とくにあの死んだロックスターのあの曲のあのテイク、
ぼくも探したいと思います。


渡邉誠さん、
ラスト・タンゴ・イン・パリ」二連発は
昨日のひそかなハイライトだったと思います。
お誕生日おめでとうございました。


次回は4月3日(土)を予定しています。


昨日はぐずついた空模様でしたが、
次回は
なんとなくゲイリー・マクファーランドの「ジ・イン・サウンド」のジャケみたいな
ぽかぽか陽気でありますように。(松永良平


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