The Band ザ・バンド / Music From Big Pink
中村とうようさんが選曲し監修したアメリカのポピュラー・コーラスの系譜をたどるCDを聞いていても改めて気がつくのだが、収録された楽曲のほとんど、タイミングを合わせフレーズを会わせて整然と歌が歌われる。参加者の声の総合による小宇宙とも言うべき調和予定されていて、それを実現するためにメンバーが声を会わせているという風だ。
アメリカン・コーラスのルーツにあたるゴスペルや白人聖歌など教会音楽にしても、そのほかドゥアップやバードグループ、バーバーショップ・コーラス、50年代のポップ・コーラス、60年代のフォーク・コーラスにおいても、それは変わらない。暗黙のうちに整然の美が予定されている。
そのような予定調和型のコーラスではなくて、参加者が思いのママにメロディ和製を分解しフレーズを重ね合わせるコーラスが登場するのは、いつの頃の事なのだろう。あたかも「僕は僕の歌を歌う」、「僕は僕の歌を歌う」的な意識の参加者達が、歌詞の細部を揃えつつ、リズムはバラバラに歌う。いわばテキトーなコーラスなのだが、それがめちゃくちゃカッコいい。
先日、とあるレコード店で探し物をしていたら、店内音楽としてザ・バンドのライヴ「ラストワルツ」が大音量で流れていて、思わずしびれた。がっちりとしたアンサンブルに、思い思いのコーラス、これがよかった。コーラスに参加するメンバーのそれぞれが、自分の歌を堂々と歌っていた。
こうしたコーラスって、どのあたりから始まるのだろう。CSNYやビーチボーイズも整然としているし、西海岸の先輩格にあたるキングストン・トリオだって、それなりだった。
いわば雑然の美のコーラス。それってもしかしたらザ・バンド以降の出来事なのかな?(大江田信)
PS
と書いてしばらくして、気づいたことがあった。それはまたの機会に。