Ricardo Santos And His Orchestra / Holiday In Japan

Hi-Fi-Record2010-03-16

The Cool School 135 RE:ディスカヴァー・ジャパン その3


以前
ある同業者の嘆きとして
「10年前に今の情報量で買付行けてたらなあ!」というセリフを聞いて
大いに笑ったことがある。


しかしそれは笑い話なだけではなくて
確かにそうだなと神妙な気分にさせられる話でもある。


フラッシュディスクランチの椿さんのように
80年代初頭にアメリカに買付に向かった世代を先駆として
買付の歴史はいくつかの変化を経験している。


そのキーポイントは大きくわけて3つ。


円高ドル安、
90年代のアナログ需要の急増、
そして
インターネットだ。


その中でもやはり
インターネット環境の発達は
レコード買付の世界を大きく変えた。


ディーラーやお店でなくても
レア盤を直に買い求めることが出来る
ネットオークションや通販サイトの拡充ということもあるが、
何よりも大きかったのは
情報量の圧倒的な増加だろう。


あのとき
すぐ横にあったのに
知らなかったからスルーしていたレコードが
実はめったにお目にかかれないレア盤だった……みたいなことも
ネットの時代ではっきりとわかるようになった。


そういう悔恨は
この仕事を長くしているひとなら
誰でも多かれ少なかれ持っているはず。


だからこそ
今の情報量を持って
ちょっとだけタイムスリップしたくもなるのだ。


ただ情報や通信の進歩が
いいことばかりだとも限らない。


こないだ訪れたある東海岸の店では
日本人の買付部隊が先客としていたのだが、
驚いたことに
買付をしている間、
彼らはずっと携帯で話し続けていた。


どうやら日本にいる誰かと
リアルタイムで連絡を取り合いながら
それぞれのレコードについての
買う買わないの是非を決めていたようなのだ。


どうもぼくには
それはあんまり気持ちのいい買付には思えなかった。


そういう光景を見ると
逆の意味で
情報の少なかったあの時代に
タイムスリップしたくなる。(この項つづく)


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どうやら本当に春が来ました!(松永良平


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