The Beach Boys ビーチ・ボーイズ / Carl And The Passions

Hi-Fi-Record2010-03-23

The Cool School 138 われらがアメイジングな車


買付の途中で立ち寄った店で
偶然に知り合ったディーラーが
「今引っ越し中でレコードを整理しているから
 時間があったらおれの家においでよ」と言うので
待ち合わせをした。


天気のいい昼間、
指定の場所に車を停めて待っていたら、
向こうからやって来た彼は
ベビーカーを押していた。


乗っていたのは赤ん坊ではなく
2歳くらいの坊や。
本当はもう歩けるんだけど
お父さんに甘えたくて
車で押してもらってきたわけ。


しかもこのディーラー、
「わるいけど、ここから近くだから
 おれたちを乗せていってくれないかな」なんて
まったくお父さんまで甘えん坊なんだから!


とにもかくにも
父子は車に乗り込んだ。


「ワオ、ワーオ」と子どもがしゃべるので
「ハウ・オールド・アーユ?」と話しかけてみた。


一瞬きょとんとした顔で
彼は答えた。


「ディスイズ・アメイジング・カー……」


通じてませんでした……。


確かにぼくたちが乗っているのはレンタカーで
日常生活臭さがあまりしないから
彼には体験したことがないほどすごいものに見えたのかもしれない。


でもさ、
若いアメリカ人のきみ、
うしろを振り返ってごらん。


そこには
山ほどの中古レコードと
ぼくたちの下着の詰まったトランクで
大変なことになってるんだから。


ああ、
きみはレコード・ディーラーの息子だから
レコードの匂いに気づいて「アメイジング」と言ってるのかな。


アメイジング……、アメイジング……」


まるで呪文のように
彼は車に乗っている間それを繰り返した。
つられてぼくらも
アメイジングないい気分になっていた。(この項おわり)


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車ジャケはないかしらと探していて
思い出した。


ビーチ・ボーイズで車なら
「シャット・ダウンVol.2」かもしれないけど、
カール・ウィルソンが頑張ったこのアルバムも
捨てがたい一枚。


クリス・レインボウを誉める前に
「オール・ディス・イズ・ザット」を聴いておこうよ。(松永良平


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