Uncle Walt’s Band / Uncle Walt’s Band

Hi-Fi-Record2010-04-02

The Cool School 143 わが街の音楽


日本の中古レコード屋さんにあって
アメリカのレコード屋さんにないコーナーは
割とたくさんある。


たとえば
シンガー・ソングライター
たとえば
AOR
たとえば
「ソフトロック」
まずそういう仕切り板にはお目にかからない。


音楽ジャンルを感覚的にとらえ
応用と解釈により
一見無関係なアーティストたちをグループ化してゆくセンスは
実は日本独特のものだと言ってもいいだろう。


欧米のレコード屋
「ロック」「フォーク」「ポップ」といった
かなりざっくりとした分け方で今も動いている。


では逆に
アメリカにあって
日本ではまず存在しないだろうコーナーは何か?


実はその答えは
はっきりしている。


ズバリ、「ローカル」だ。


国土が広く、
州ごとに風土も税制も法律も違うアメリカでは
地元だけで音楽を続けているアーティストが
やまほどいる。


そして
そういうローカル・アーティストのための
レコーディング・スタジオや
レコード・レーベルも古くから存在している。


その土地でしか見つからないタイプのレコードが
たくさん作られているのだ。


「ローカル」は
音楽スタイルではなく
出身地で区分けされたコーナーなので
何が出てくるかわからない楽しみが探す側にもあるし、
実際にそこから見つかった
ハイファイの秘宝とも呼べる名盤も数多くある。


日本にだって
独自のシーンが豊かな音楽シーンが育まれている地方都市は
たくさんあるのだと思う。


レコード屋の片隅にでも
必ず「ローカル」というコーナーがあるという歴史が
日本にも昔からあったなら、
誰もが東京を目指すというかたちじゃない音楽の広がり方が
きっともっとおもしろく展開していたはずだ。


それとも
日本人アーティストを
「あいうえお」じゃなくて
出身地別に区分けしているレコード屋があったとしたら?
意外とそれで目に留まるものもあるんじゃないか?


レコードやCDを売るヒントって
そういうところにもあるような気が
最近している。(この項おわり)


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テキサス州オースティンの
偉大なるアコースティック・トリオ、
アンクル・ウォルツ・バンド。


リーダーのウォルター・ハイアットも含め
3人中2人がすでに故人で
残念ながらこの素晴らしい音楽は
もうレコードの中にしか残っていない。


しかし
こないだオースティンのディーラーに、
メンバーの息子さんが
アンクル・ウォルツ・バンドの精神を受け継いだ
素敵なバンドをやっているんだという話を聞いた。


とてもうれしくなって
バンド名を訊ねたのだが
おじさんはどうしてもそれを思い出せなかった。


「ええと、女の子が歌っていてな、
 何だったかな、
 とにかくいいバンドなんだよ!」


まあ、いいバンドだったら、いいか!
ぼくも笑った。


そのバンド名を突き止めることは
今のところ次の宿題になっている。(松永良平


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