The International Pop Orchestra (110 Men) / Songs That Will〜

Hi-Fi-Record2010-04-06

The Cool School 145 全部売りたし


南部の大都市から大都市へと
車を走らせている途中に瀟洒な街があり、
どうやらそこに一軒レコード屋があるぞということで
立ち寄ってみた。


こじんまりとした三軒並びの建物の右端に
その店はあった。
木製のドアが雰囲気がいいなと感じ入っていたら
店の中もなかなかにいい感じ。


よろこびいさんで買付をしていたら
店主に話しかけられた。


なんでもこの店は
年老いた男性ふたりで共同経営しているのだということ。


落ち着いた品の良さが
そのまま品揃えにも出ていた。


買付から帰ってしばらくしたら
その店からメールが届いた。


ふたりの経営者のうち
ひとりがリタイヤをするので
店を閉めようと思っているとのこと。


本題はその次だった。
ついては
店に残っているレコードを全部買ってはくれまいかというのだ。


メールを読んだ大江田さんと顔を見合わせた。


あの店、
こじんまりしているとは言え
在庫もあるだろうから
少なく見積もっても数千、いや一万枚は超えるかもしれない。


買付の店をやっているのだから
よろこぶべき話かもしれない。
だが、
ぼくたちふたりにはちょっとためらいがあった。


まずそれだけの量のレコードを
どうやって送るか。
そしてどこに保管するか。


また一番の問題は
先方の条件は全部買ってほしいというものだったことだ。


ぼくたちが欲しいものだけ選り分けるとはいかない。


それに
この話はずいぶん前のことで
当時のハイファイの売れ筋であった
シンガー・ソングライターAORのレコードは
その店にはあまりなかったのだ。


悩んだ挙げ句
申し訳ないが引き取れませんという返事を出した。


あれからあのレコードはどうなったのだろうと
ふと思い出す日々がしばらく続いた。


一年ほど経ったころだろうか。
その店からメールがまた届いた。


結局、残ったひとりで
まだ店は元気に続けているとの内容だった。
ほっとひと安心しながら、
レコード屋はレコードを売ることを
そう簡単にはやめられないのだとも思った。


やさしそうな顔をしたあの老人にも
業というものがあったということなんだろう。(この項おわり)


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101ストリングスに対抗して
110人のオーケストラとは!


あまりにばかばかしい意地の張り合いというか
スケールの大きさに笑った!


昔のひとの洒落は
おもしろい。(松永良平


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