James Taylor ジェームス・テイラー / Gorilla
昨日、ジェームス・テイラーとキャロル・キングのコンサートに行った。
あんまり多くを書くとこれから公演を聴く人の興趣を削ぐことになるので、内容は、最高だったということだけを記して、気づいたことを少し。
なんの予備知識も持たずに会場の武道館に入った。
2曲目を歌い出す前に、ジェイムス・テイラーが「1971年のトルバドールのライヴの時のことを、キャロルは覚えているというんだけれども、僕は詳しい事を忘れてしまった。でもたぶんこの曲は演ったと思う」といったことを語ったのち歌い出したのが、「思い出のキャロライナ(Carolina on my mind)」。
バックアップ・メンバーには当時のジェイムスのバンド、セクションからラス・カンケルとベースのリーランド・スクラーとギターのダニー・コーチマー(ジェムスは、My Old Bandと呼んでいた)が参加しているし、舞台のセットもまるで小さなクラブで演奏するかのように簡易で質素なもの。まるでトルバドールのステージの様子を、そのまま再現しているかのようだ。
途中に20分間の休憩を挟んで、ショウは前半と後半に別れている。その休憩の時間中、ステージにはトルバドールのロゴの一部が、映し出される。演奏の合間には、かつての70年代の二人、またはセクションを含めた友人たちが映る写真の数々がフラッシュ・バックするかのように挟み込まれる。終演後にもトルバドールの文字の一部が残ったままで、会場の灯りが点される。
トルバドールとは、ロサンジェルスのハリウッドに1957年にオープンし、今も続くライヴハウスだ。数々のアーチストのライヴが催されてきたし、今もロサンジェルスのホットなライヴハウスであることは間違いない。
かつてジェイムスも、ここでソロ・デビューを飾った。後に妻となるカーリー・サイモンと出会ったのも、ここトルバドールでのことだったという。
なるほど今日のライヴはトルバドールの時代の音楽や雰囲気の再演なのだと思いつつ、不思議な気持ちになったのは、丁度この日の昼間にかつてロサンジェルスに暮らし、足しげくトルバドールに通っていた女性と雑談していたからだ。
その昔、70年代初頭のトルバドールのこと。今では店の奥、ステージ前の一画はスタンディングのスペースになっているあたり、かつては学校の机のようなものが一列に複数ならんでいて、客は椅子に座ってライヴを聴いていたとか、今は道路の向かい側にある駐車場に車を停めることになるけれども、昔は店の裏側の一画の住宅街に車を停めることができたとか、そんな話を聞いていた。
なんという不思議な偶然なのだろうと思った。
キャロルとジェイムスがとても親密に音楽を交歓し、互いを讃え合うライヴ。なるほど二人の交友は、こうだったんだ、だからこそジェイムスのアルバムに「君の友だち(You've got a friend)」が収録されたのだとということが、実感を持ってわかった。
家にもどってキャロル・キングのホームページをみたら、なんのことはない、今回の二人のツアーが「Troubadour Reunion」と題されている事を知った。しかもCDとDVD「Live At Troudabour」が5月にリリースされるという。
トルバドールのことを幸せな気持ちと共に二回も考えた不思議な一日を記憶するための素敵な贈り物として、ぼくはたぶんこのCDとDVDを買うことになるのだろう。
このアルバムからは、2曲。ジェイムス・テイラーの「ゴリラ」。(大江田信)