The Cowsills カウシルズ / The Cowsills

Hi-Fi-Record2010-04-19

The Cool School 150 ぼくの好きなレコード店


早いもので
この連載「The Cool School」も今回で150回に達した。


去年の4月28日のブログ
これから始めようと思います、みたいなことを書いているので
約一年で到達したことになる。


節目ついでに言えば
今年2010年は
ぼくが買付に行かせてもらうようになって10年目にあたる。


いったい何回渡米したかは
すぐには数えられないが
行ったことのあるアメリカの州を数えることは出来た。


50州のうち33州。
今年に入って踏破リストに2州加えたところだけど
まだ17州も未踏の地があるのか。
ちょっと震えてきた。


さらに言うと
ハイファイで現在記録されている
アメリカのレコード店リストは
累計1831店にのぼる!


もっともこの中には
すでに存在しない店も残念ながらたくさんあるし、
まだ行ったことがないが住所だけは押さえてあるという店もある。
個人ディーラーの住所もあるし、
お気に入りのメキシカン・レストランの住所も紛れ込んでいたりする。


それでもおおむね
1000店舗ぐらいは
今でも何らかのかたちで存在していると見ていいだろう。


150回ブログをこのテーマで書いたぐらいじゃ
この世界は全然見通せないほど遠く広いのだ。


しかし
ぼくの知っている店やレコード店主は
限られたものかもしれないけれど、
やはりそこには好きな店、
あまり好きになれない店が
それぞれある。


じゃあ、ぼくの好きなレコード店って
いったいどういう傾向の店なんだろうか。


自分の好みのレコードがいっぱい揃っている店か、
コンディションのいい店か、
値段が思いがけずリーズナブルな店か、
レコードという文化を重要に考えている店か、
シングル盤がいっぱいある店か、
いつもにぎやかにお客さんが会話している店か、
それともそのすべてか。


もしくは
そのどれでもない、
……のかもしれない。


たとえば
ぼくの好きな西海岸のある店は
にぎやかな街並からは結構離れているし
ましてや間違っても流行っているとは言えない。
インターネットにも全然キャッチアップ出来ていないし
おもしろいレコードを見つけて売っているのはわかるけど
センスとして現代人に通用しているのかすら怪しい。


だが
どうやら彼の信じるところと
ハイファイのセンスはウマが合うらしく
いつもそれなりの収穫をぼくたちは見つける。


いつだったか
「また今度ね」と言ってお店を出ようとしたら
店主はおどけた調子で
「そうだな〜、おれがまだここにいればな」と声を返した。


不意にこっちも真顔になって立ち止まった。


「閉めるつもりなの?」


ハハッと短い笑い声をあげて
彼は言った。


「もっともおれに他に行く場所なんてないんだけどさ」


それは気のいい冗談でもあり
彼の本心のようでもあった。


ぼくの好きな店は
レコードを売っている。


ぼくの好きな店は
きっとレコードを愛しすぎている。


だからぼくの好きな店は
どこかですこしせつない。


それは10年目の買付で得た
答えのひとつでもある。


The Cool Schoolは
もうすこし踏ん切り悪く続けてみたい。(この項おわり)


===================================


東京は久々にいい天気が続いている。


カウシルズの「雨に消えた初恋」は
邦題の気分で言うとしとしと雨な天気だが、
実はこの曲に一番似合うのは
雨上がりの青空だろうと
昔から思っている。


つまり初恋は
そぼ降る雨の中に消えたんじゃなくて
雨が上がるとともに消えたのだというのが
ぼくの(どうでもいい)説。


空は晴れているのに
かなしみがあるなんて
その方が甘酸っぱくていいじゃないか。(松永良平


Hi-Fi Record Store