Buddy Fo And His Group / Kiss Me Love

Hi-Fi-Record2010-04-28

 いつのまにかハイファイのデータベースに「Kiss Me Love」のタイトルのレコードが3つ揃った。


 それぞれにアーチスト名とレーベルが違う。どうしたものかと調べてみると、ちょっと面白い事がわかった。


 まずその3枚のデータを列記してみる。


The Invitations / Kiss Me Love / makaha MS2031
Buddy Fo And His Group / Kiss Me Love / makaha MS2031
Buddy Fo And His Group / Kiss Me Love / Lehua SL2031


 正確な発表年代はよくわからないのだが、恐らく60年代の初期から中期頃のリリースと想われるのが、makahaの2枚。Lehuaの盤が、それからまた後のことだろうと、これくらいしか判然としない。


 Invitationsはジャズのハーモニーでハワイアンを歌った男性4人組コーラス・グループだ。
 1959年と60年に米本土のレーベル、リバティから2枚のアルバムを発表している。
 初代の Invitations が解散し、メンバーを一新してリリースしたのが彼らの3枚目に相当するmakahaからの「Kiss Me Love」だった。Invitationsの主たるメンバーだったバディ・フォーが主導したチームで、この時点でグループ名にバディの名前を冠してもよかったのだが、惜しむらくはまだ彼の知名度が低いという理由で、The Invitation名義でアルバムが発表されたのだそうだ。


 しばらくしてバディ・フォーの知名度が上がったところで、Buddy Fo And His Group名でアルバム「Kiss Me Love」がリリースされる。
 手に取ってみると解るのだが、ジャケットは元々のThe InvitationsのところにそのままBuddy Fo And His Groupの名前が入ったもの、レコードはというとレーベルにはアーチスト名が印刷されていない。レコード番号も同じだ。Invitations盤とBuddy Fo盤とで同じレコードを封入して販売されたのではないかと思う。
 当初からInvitations名とBuddy Fo And His Group名とでアルバムをリリース出来るように準備されていたと考える方が自然だ。
 となると、ハワイ州内ではBuddy Fo名義でアルバムを販売し、米本土にはInvitations名のアルバムを持ち込んだのかもしれない、そんな想像も成り立つような気がするのだが。
Lehua 盤の方はというと、これは明らかにmakahaのBuddy Fo名義のリイシュー。
 ほどなくしてバディ・フォーの知名度が、グンと上がったのだろう。この後には、彼は自らの名前を冠したアルバムが、複数にわたってリリースされるようになる。


 グループの一員だったメンバーが、グループを離れてアルバムをリリースすると、数少ない成功者をのぞけば、多くの場合は、元のグループでの販売数の2割にも満たない数となるとは、よく言われる事だ。
 メンバーの個人の名前なんて、なかなか覚えられていないものだと、アメリカの業界関係者から聴いた事がある。


 グループ名が違い、レーベルが違いながら同内容の3種のアルバムがリリースされている例は、なかなかに珍しいのではないかと思うので、ちょっと記してみた次第。(大江田信)


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