Buddy Fo And His Group / Kiss Me Love
いつのまにかハイファイのデータベースに「Kiss Me Love」のタイトルのレコードが3つ揃った。
それぞれにアーチスト名とレーベルが違う。どうしたものかと調べてみると、ちょっと面白い事がわかった。
まずその3枚のデータを列記してみる。
The Invitations / Kiss Me Love / makaha MS2031
Buddy Fo And His Group / Kiss Me Love / makaha MS2031
Buddy Fo And His Group / Kiss Me Love / Lehua SL2031
正確な発表年代はよくわからないのだが、恐らく60年代の初期から中期頃のリリースと想われるのが、makahaの2枚。Lehuaの盤が、それからまた後のことだろうと、これくらいしか判然としない。
Invitationsはジャズのハーモニーでハワイアンを歌った男性4人組コーラス・グループだ。
1959年と60年に米本土のレーベル、リバティから2枚のアルバムを発表している。
初代の Invitations が解散し、メンバーを一新してリリースしたのが彼らの3枚目に相当するmakahaからの「Kiss Me Love」だった。Invitationsの主たるメンバーだったバディ・フォーが主導したチームで、この時点でグループ名にバディの名前を冠してもよかったのだが、惜しむらくはまだ彼の知名度が低いという理由で、The Invitation名義でアルバムが発表されたのだそうだ。
しばらくしてバディ・フォーの知名度が上がったところで、Buddy Fo And His Group名でアルバム「Kiss Me Love」がリリースされる。
手に取ってみると解るのだが、ジャケットは元々のThe InvitationsのところにそのままBuddy Fo And His Groupの名前が入ったもの、レコードはというとレーベルにはアーチスト名が印刷されていない。レコード番号も同じだ。Invitations盤とBuddy Fo盤とで同じレコードを封入して販売されたのではないかと思う。
当初からInvitations名とBuddy Fo And His Group名とでアルバムをリリース出来るように準備されていたと考える方が自然だ。
となると、ハワイ州内ではBuddy Fo名義でアルバムを販売し、米本土にはInvitations名のアルバムを持ち込んだのかもしれない、そんな想像も成り立つような気がするのだが。
Lehua 盤の方はというと、これは明らかにmakahaのBuddy Fo名義のリイシュー。
ほどなくしてバディ・フォーの知名度が、グンと上がったのだろう。この後には、彼は自らの名前を冠したアルバムが、複数にわたってリリースされるようになる。
グループの一員だったメンバーが、グループを離れてアルバムをリリースすると、数少ない成功者をのぞけば、多くの場合は、元のグループでの販売数の2割にも満たない数となるとは、よく言われる事だ。
メンバーの個人の名前なんて、なかなか覚えられていないものだと、アメリカの業界関係者から聴いた事がある。
グループ名が違い、レーベルが違いながら同内容の3種のアルバムがリリースされている例は、なかなかに珍しいのではないかと思うので、ちょっと記してみた次第。(大江田信)