The Tarriers タリアーズ / The Original Tarriers

Hi-Fi-Record2010-05-12

 ふと思いついて調べ物をしているうちに、これまで最も著名なカリプソの一曲と文献に記載されることが通例のハリー・ベラフォンテの「バナナ・ボート・ソング」は、実はカリプソでは無くて、ジャマイカ民謡の労働歌だという記述に出会った。


 「伝票担当者さんよ、バナナを数えてくれ、早く家に帰りたいんだよ」と訴える箇所が、あの有名な「デイ・オー」の後に続く歌詞に登場してくる。となるとバナナ農園は、トリニダート島ではなくてジャマイカにあったということなのか、と驚いた。ジャマイカのバナナ農園でのワーク・ソングだったのか。


 おもしろいことにこの曲、1955年から58年ごろにかけて、コーラス、インスト、フォークタイプのコーラスなど、様々なスタイルの演奏によって、アメリカのシングル・チャートの上位に繰り返し入っている。
 ハリー・ベラフォンテのヒット枚数ですら相当の数だろうから、これらの複数アーチストによるレコードの総販売数をまとめると、驚くべき数字となることだろう。


 バナナ・ボート・ソングのルーツについては、ジャマイカ説の方が、いまでは通説となりつつあるらしい。
 真偽を自分の耳で確かめようがないのがいかにも残念なのだが、それにしても南アメリカカリブ海の音楽を見て行くと、20世紀の前半、そのほとんどが一度アメリカ上陸し、その後に世界に飛び出して行っていることがわかってくる。



 先ほど触れたフォークタイプの「バナナ・ボート・ソング」とは、こちらのこと。
 フォークの一面を知る興味深いエピソードだと思う。フォークは、今で言うワールド・ミュージックの端緒でもあったのだ。(大江田信)



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