Raymond Scott And The Secret Seven / The Unexpected

Hi-Fi-Record2010-05-14

The Cool School 161 買付秘密兵器 その1


しばらく
企業秘密とも言える
ハイファイの買付秘密兵器について
書いていこうと思う。


その店は
朝8時半から開いている。


たしかこの店のこと
前にも書いたはずだと思い
調べてみたら、ここにあった。


でも大丈夫。
今回は同じ店でも違う話だ。


その日は
冬の寒い朝だった。


西海岸は
冬でも太平洋の暖流の影響があるせいか
比較的北の方でも寒さは厳しくない。


しかし
その日は寒かった。


大江田さんと店に入り
よし、やるかと気合いを入れる。


この店は平屋なのだが
レコードの置き方は二階建てになっていた。
要するに
テーブルの上に通常のレコード箱が置かれ、
その下にも所狭しとレコード箱がひしめいている構造なのだ。


レコード買付の常識のひとつとして
そういう場合は下から見ろという鉄則がある。
バーゲン品や処分品の山かもしれないが
だれにも予期出来ないレコードとの出会いは
むしろそういう場所にある。


ここ掘れわんわん。
腰をおろし
いざ水泳選手の飛び込みのごとく
テーブルの下に飛び込むのだ。
そこはホコリとゴミともしかしたら宝物が眠る海。


そうやって
掘り始めて数分後、
両脇から何かがからだにさわるような感覚があった。
すうっとしのびよって
シャツの袖やズボンの裾からまとわりついてくる。


それは
冷気。


寒!


小学校のときにならった
暖かい空気は上に行き
冷たい空気は下に降りるという原理を
今さらのように体感させられるとは!


足下と頭上では
下手したら数度くらいは気温が違うんじゃないか?


寒さに震えながら
大江田さんのいる方に向かってみた。
大江田さんは
やはり下の箱におさめられているハワイアンを
熱心に掘っている。
どうやら大漁らしい。


熱気がからだから湧いてくるのはわかるけれど
それにしてもこの寒さで大丈夫なんですかと訊いてみた。


「大丈夫だよ。パッチ履いてるから」
「パッチ? それ何ですか?」
「だから、ズボン下だよ」
「それって、ももひきでしょ? 絶対イヤだ」
「履いてみてごらんよ、全然違うから」
「イヤだ、イヤだ」


まるで子どものケンカ。
でもそのケンカのおかげで
すこしからだに熱が戻ってきたので
なんとか無事にこの店をやりおえることが出来た。


大江田さんのパッチに
ちょっとだけ感謝。


ハイファイの買付秘密兵器その1、
それはパッチ。
ただし大江田さん限定。
まだぼくはパッチは履いてない。(この項なんとなくつづく)


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レイモンド・スコットと秘密の7人。


CD化された際に長年の秘密が明かされ
今となっては参加メンバーは判明しているが
発売当時は本当に名を隠した連中が集まっていた。


ハイファイの買付秘密兵器、
7つもあったかなと思うけれど
それぐらいは続けてみようという意気込みで
このアルバムを選んでみた。(松永良平


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