Bobby Timmons ボビー・ティモンズ / Soul Food

Hi-Fi-Record2010-05-17

The Cool School 163 買付秘密兵器 その3


ここだけの話、
大江田さんがグルメだという説は
果たして本当なのだろうかと思うことがある。


その疑念は
ある時期から
キッチン付きのモーテルで
ぼくが料理をはじめたころに芽生えた。


最初のうちは
スライスベーコンをただひたすらカリカリになるまで焼いたり、
お皿いっぱいのマッシュルームをレンジでチンしたり、
料理じゃなくて調理だよと言いたくなるようなメニューが多かった。


だがそのうち
長期滞在のときなど
スーパーで塩や油、しょうゆを調達するようになり
つくるもののレパートリーが広がっていった。


「松永くん
 肉豆腐が食いたいよ」


そう大江田さんが言うので
豆腐とベーコン、タマネギに
コンソメと醤油、塩を使って
なんちゃって肉豆腐をこしらえたこともある。


男の料理なんだし
味をごまかす意味もあって
デフォルトは濃い味だ。


ところが
そんな料理でも
うまいうまいと喜んで
ぱくぱくとたいらげてくれる。


日本にいるときのお客さんとの会話で
やれあそこの何がうまいとか
東京の食通らしく話す大江田さんを目にしていたので、
最初のうちは半信半疑だった。


しかしそのうち
どうやらぼくの料理に対する褒め言葉は本気らしいと
信じるようになってきた。


英雄、色を好むのたとえもあるように
食通、ジャンクフードを好む
なんてこともあるかもしれない。


最近のレパートリーとして急浮上してきたのは
ビニールパックに入った乾麺のインスタントやきそばだ。
アメリカでも日本人が多く住む街などで
よく見かけるようになった。


油を使わず
お湯をフライパンに張れば出来ることもあって
ラクチンなのだ。
最近はあんまり食べないが
ぼくにとっては高校時代に死ぬほど食べた
なつかしい味でもある。


そのうち大江田さんもこれを所望されるようになってきた。
食通の意見は厳しく
「肉やもやしもいれてよ」とおっしゃる。


そういうときは先にもやし炒めを作って
あとでやきそばと合わせる。


これがどうも
最高にはまったらしい。


大江田さんが今まで各地で味わってきた
繊細にして優雅な素晴らしい料理を作ってきた
板前さん、コックさん、
ごめんなさい!


今、
買付がくたびれてきたころに
最高に効く秘密兵器は
日本のインスタントやきそばでありました。(この項つづく)


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やきそばを
ソウルフードだと言うのは言い過ぎかもね。


なお
ぼくの意見では
インスタントやきそばに具を入れるのは邪道。
具無しに限る。
これ本当。(松永良平


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