101 Strings 101ストリングス / Astro Sounds

Hi-Fi-Record2010-05-18

The Cool School 164 買付秘密兵器 その4


20世紀最後の、
そして最大の発明のひとつに
パソコンと携帯電話は入る。


そしてこのふたつは
買付という仕事を
21世紀に変えた発明品であったことも間違いない。


ハイファイの買付もそうだ。


2001年にぼくが最初の買付についていったころには
まだそのふたつをアメリカに持っていくなんて
だれも考えていなかった。


もちろん国内では
十分普及をしていたけれど
まだ海外にわざわざ持ってゆく必要も感じていなかったのだ。


パソコンと携帯、
それぞれに
登場前と登場後に
変わったことがある。


今日はまず
携帯の方の話にしよう。


携帯が登場する前、
日本に残ったスタッフや家族と話す手段は
もちろん電話だった。


しかし
電話はモーテルにあるものを使うか
さもなくば街のなかにある公衆電話を探して使う。


たいていの場合
プリペイドの通話無料カードを使う。
アメリカのフリーダイヤルは「1-800」。


ハイウェイの途中にあるレストエリアで
日本時間の朝(アメリカ時間の昼〜夕方)に
電話するというパターンも多かった。


以前
真夜中にハイウェイを走る羽目になったときに
真っ暗なレストエリアから
家に電話したことがある。


あのときの夜空は
今でも忘れられない。


今となっては昔話だが
レコード屋で見つけた
レアなのかわからないが
何だかとてつもなく珍しそうなレコードの
手掛かりを得るために店主に頼み込んでお店の電話を借り
日本のスタッフに質問したなんてこともあった。


日本語でしゃべっているとは言え
「これって珍しいのかねえ?」なんて
ひとの電話で話してたのだから
いい迷惑だ。


携帯電話で世界通話が出来るようになって
いろんなことが他人の手をわずらわせず出来るようになった。
これから行く店の道案内も電話一本で教わることが出来る。
公衆電話を探して街なかをうろうろする必要もなくなった。
そもそもアメリカの街角からも
公衆電話は姿を消しつつある。


ただ
なんというか
電話をめぐるドタバタ感とか
遠く離れているからこそ生まれる「やっと話せた」感みたいなもの、
それをときどき懐かしく思う。


そういう感覚が生む気分の高揚が
見つけさせてくれるレコードもあるはずだから。(この項つづく)


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101ストリングスの名を借りた
1969年から見た未来の音楽。


20世紀に流行った未来予測で
テレビ電話や
自動車電話
すでに登場すると言われていたが、
携帯電話だけは考えつくひとが少なかったという話を聞く。


未来のスパイが
腕時計に向って話したりするシーンは
SFなんかでもあったのにね。


受話器と電話が一体化して
今みたいになるとは
想像しなかったか。


つい5年ほど前まで使っていた
ぼくの古い携帯は
あまりの大きさと重さに
「子機ですか?」とよく言われていたけど。(松永良平


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