Lennon Sisters レノン・シスターズ / Today!!

Hi-Fi-Record2010-05-27

 昨日の続き。


 最初に演奏されたのはあくまでも初演であって、これを範として語り継ぐこととはまた別の話だというのが、クラシック音楽の通例だ。
 ポピュラー音楽では、初演がオリジナル、その後の演奏にはカバーと呼ばれる。


 とこう書いてきて、必ずしもそうでもないことに気づいた。
 おおよそ1950年代くらいまでのジャズのスタンダードでは、この曲では誰それの演奏を推奨したいとか、定番とすると言った言い方が用いられる。歌唱作品の場合も同様だ。つまり多くの演奏が、すでに"カバー"なのだ。


 こうしてみると、ある時代までのジャズのスタンダードもクラシックと同様の扱いをしていいのかもしれない。
 それはジャズとクラシックに音楽として共通の要素があるからというよりも、たぶんレコード産業の成長、レコード録音の進化とからんでくるとことなのだと思う。


 クラシックも1950年代以前のジャズも、初演はほとんど録音されていない。そもそも録音を目的として、演奏されていない。
 初演が録音されるようになるのは、1950年代以降に書かれた作品で、しかも作品が書かれる時点からレコード用の録音が視野に入っている。
 映画音楽やミュージカルも、すこしづつレコード会社とのタイアップが進むにつれ、作品発表とレコード発売が、同時進行するようになった。


 ポップスやロックは、レコード化を前提として発表される音楽だ。レコード化されることが、作品に陽が当たることだ。
 レコード化とは、同時に自らをオリジナルと主張できるということでもある。


 時としてカバー曲がオリジナルとは全く違う個性を発揮する。
 これがポピュラー音楽のおもしろいところで、新たな個性の発揮が聴衆に期待されている一面もあるのだろう。


 思いもかけないアルバムの片隅いにおさめられた秀逸のカヴァー。
 あのレノン・シスダーズが、あの「I'm Gonna Make Youi Love Me」をやるなんて。
 この驚きの感じがわかる方は、ぜひご試聴を。
 ちなみにこの曲の邦題は、「君に愛されたい」。言われてみれば、確かにその通り、というタイトルだ。(大江田信)


試聴はこちらから。