The Chiffons シフォンズ / Sweet Talkin’ Guy

Hi-Fi-Record2010-05-29

The Cool School 167 レコめし その4


モーテルだけは立派に出来ているが
よく見渡すと
あたりは何もない街だった。


それって結構よくあるパターン。


その日は
結構な時間まで買付を続け、
肉体的にも疲労困憊。
街なかでどこかの店に入って
いちいち給仕を待って食事するという余力もなかった。


こんな日は
さっさとモーテルに帰って
パンツとTシャツいっちょうになって
ベッドに倒れ込みつつ
ビールを飲みたい。


とは言え
お腹は腹ぺこ。


モーテルの近所に
ファストフードか
最悪でもガソリンスタンドくらいは開いてるだろう。
もう今夜はそれでいい。


ところが
モーテルから車でどれだけ走っても
灯りらしいものが見えない。
どうもこのあたりは夜の治安がよろしくないようで
ガソリンスタンドですら
深夜を待たずに営業終了してしまうのだ。


そんな街だから
ファストフードも早じまい。
推して知るべしだった。


結局
何の収穫もなく
倍以上の疲れだけを感じつつ
モーテルに戻ることにした。


そのときだ。
前方の暗がりに
明るく光るビルがある。


ホテルだ。


あそこに行けば
ラウンジか何かがあって
ちょっと高くつくかもしれないけど
食べるものはあるんじゃないか。


そう期待を込めて
駐車場にすべりこむ。


しかし
ロビーは明るいが
ひとけはなく閑散としている。
どうやら
そういう酒と食事の提供そのものを
このあたりは街ぐるみで控えているらしいと悟った。


フロントの脇には
小さな売店があった。
確かこの手の売店には
冷凍食品とか置いているはず。


ところがどうだ。
冷凍庫の中は空っぽ。
その横に申し訳程度にカップ麺が2、3個積んである。
これしかないか……。


きっとぼくらと似たような
夜の食事難民たちが
食うべきものをさらっていってしまったのだろう。


結局
ぼくらはカップ麺2個を手に取り
やたらに立派な造りのフロントで会計を済ませた。


フロントの男性は
何もかもお見通しのように
おだやかに笑っていた。(この項つづく)


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3分間ポップスという言葉がある。


カップ麺はお湯を入れてから
3分程度でおいしくいただけるものなので
じゃあ一曲聴きながら待つとするかと考える。


しかし
60年代のポップスでトライすると
たいてい麺が固めになってしまうことに気がついた。


あの時代のいかしたポップスは
実は2分間程度で完結しているものが多いのだ。


シフォンズの「スウィート・トーキン・ガイ」は
2分12秒しかない。
なんと豊かな2分間か!(松永良平


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