Johnny Mathis / When Will I See You Again
The Cool School 172 今どきだれも買わないレコード
ぼくたちの仕事はアメリカに買付に行くと
自分の趣味を超えた範疇で
隅から隅までレコード屋のなかを漁ることなので
一軒あたりの滞在時間は必然的に長くなる。
そのため
お店のなかで繰り広げられる
いろいろな出会いや会話を
見聞きする機会が多い。
今までも
いくつかそんな話を書いて来た。
今回はそのうちの
お店の秘密にかかわる場面のお話。
つまり
アメリカのお店は
どうやってレコードを仕入れているのかという秘密について。
コレクターの家を訪ねたり
レコードショーに出向いたり
その方法はさまざまだが
やはりその中心になるのは
店頭に「買ってください」と
お客さんが持ち込んでくるレコードの対応になる。
お店にもよるのだが
だいたい数十枚のレコードを店主が見て
数分のうちに結論を出す場合が多い。
パラパラと最後にもう一度点検して
「●●バックス(ドルの意)」と総額を言い渡す。
もし珍しいものがあると客が主張するのなら
コンサインメント(委託)を薦めたりもする。
東海岸のある店では
とんだ場面に出くわした。
中年男性が持ち込んだレコードを見て
店主がいきなり激高したのだ。
「いいか!
おまえ!
今どきフランク・シナトラやジョニー・マティスのレコードなんか
だれひとり買わないんだ!
持って帰ってサルヴェーション・アーミーにでも
寄付したほうがマシだぞ!」
そこまで言わなくてもいいのにと思うほどの大声だったので
関係ないぼくたちまで気の毒な気分になってしまった。
だが
実はあながち関係がないわけでもなかった。
その、店主によれば
今ではだれも買わないはずのシナトラやジョニー・マティスを
そのころからぼくたちは喜んで買うようになっていたからだ。
ぼくたちの積んでいるレコードの山には
シナトラがごっそり入っていた。
もし今
これをカウンターに持っていったら
店主の面目まるつぶれになってしまうだろう。
売り客は結局すごすごとレコードを持って帰ってしまったが
そのあと
ぼくたちがカウンターに持ち込んだ大量のシナトラを見て
店主は「ふむ?」と一瞬眉を上げ
なんだか不思議な生き物でも見るように
会計をしていたのが忘れられない。(この項おわり)
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タイガーカラーのラガーシャツに身をつつんだ
ジョニー・マティス。
同時代のライバルたちが
70年代に入って
どんどんアルバムを出せなくなるなか
このひとはソウルやAORにも柔軟に対応し
数多くの作品を残した。
最良のスタッフ
最良の楽曲
最良のヴェルヴェット・ヴォイス。
彼の70年代音源でベスト盤を編ませてくれたら
ちょっとみんながびっくりするくらい
スウィートでかっこいいのが出来ると思う。
追伸をひとつ!
明日6/12(土)は
恵比寿tenementで
毎月恒例のDJ「GARDEN」です。
今回から時間帯が変更になってますので
お見知りおきを。
スタートは夕暮れどきの17:00
エンディングは終電を意識して24:00。
そのあとの時間もアフターアワーズ的に
レコードをかけたりはしていると思いますが、
ひとまずは真夜中前に終了ということで。
「GARDEN」@恵比寿tenement
17:00-24:00
charge free
DJ : 内田靖人/松永良平/前園直樹/武藤秀幸
どうぞよろしく。(松永良平)
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