Johnny Mathis / When Will I See You Again

Hi-Fi-Record2010-06-11

The Cool School 172 今どきだれも買わないレコード


ぼくたちの仕事はアメリカに買付に行くと
自分の趣味を超えた範疇で
隅から隅までレコード屋のなかを漁ることなので
一軒あたりの滞在時間は必然的に長くなる。


そのため
お店のなかで繰り広げられる
いろいろな出会いや会話を
見聞きする機会が多い。


今までも
いくつかそんな話を書いて来た。


今回はそのうちの
お店の秘密にかかわる場面のお話。


つまり
アメリカのお店は
どうやってレコードを仕入れているのかという秘密について。

コレクターの家を訪ねたり
レコードショーに出向いたり
その方法はさまざまだが
やはりその中心になるのは
店頭に「買ってください」と
お客さんが持ち込んでくるレコードの対応になる。


お店にもよるのだが
だいたい数十枚のレコードを店主が見て
数分のうちに結論を出す場合が多い。


パラパラと最後にもう一度点検して
「●●バックス(ドルの意)」と総額を言い渡す。


もし珍しいものがあると客が主張するのなら
コンサインメント(委託)を薦めたりもする。


東海岸のある店では
とんだ場面に出くわした。


中年男性が持ち込んだレコードを見て
店主がいきなり激高したのだ。


「いいか!
 おまえ!
 今どきフランク・シナトラジョニー・マティスのレコードなんか
 だれひとり買わないんだ!
 持って帰ってサルヴェーション・アーミーにでも
 寄付したほうがマシだぞ!」


そこまで言わなくてもいいのにと思うほどの大声だったので
関係ないぼくたちまで気の毒な気分になってしまった。


だが
実はあながち関係がないわけでもなかった。
その、店主によれば
今ではだれも買わないはずのシナトラやジョニー・マティス
そのころからぼくたちは喜んで買うようになっていたからだ。


ぼくたちの積んでいるレコードの山には
シナトラがごっそり入っていた。
もし今
これをカウンターに持っていったら
店主の面目まるつぶれになってしまうだろう。


売り客は結局すごすごとレコードを持って帰ってしまったが
そのあと
ぼくたちがカウンターに持ち込んだ大量のシナトラを見て
店主は「ふむ?」と一瞬眉を上げ
なんだか不思議な生き物でも見るように
会計をしていたのが忘れられない。(この項おわり)


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タイガーカラーのラガーシャツに身をつつんだ
ジョニー・マティス


同時代のライバルたちが
70年代に入って
どんどんアルバムを出せなくなるなか
このひとはソウルやAORにも柔軟に対応し
数多くの作品を残した。


最良のスタッフ
最良の楽曲
最良のヴェルヴェット・ヴォイス。


彼の70年代音源でベスト盤を編ませてくれたら
ちょっとみんながびっくりするくらい
スウィートでかっこいいのが出来ると思う。


追伸をひとつ!


明日6/12(土)は
恵比寿tenementで
毎月恒例のDJ「GARDEN」です。


今回から時間帯が変更になってますので
お見知りおきを。


スタートは夕暮れどきの17:00
エンディングは終電を意識して24:00。
そのあとの時間もアフターアワーズ的に
レコードをかけたりはしていると思いますが、
ひとまずは真夜中前に終了ということで。


「GARDEN」@恵比寿tenement
17:00-24:00
charge free


DJ : 内田靖人/松永良平/前園直樹/武藤秀幸


どうぞよろしく。(松永良平


試聴はこちらから。