Les Paul And Mary Ford / Les And Mary

Hi-Fi-Record2010-06-15

The Cool School 174 フリーマーケットのふたり その1


週末だけオープンしているそのフリーマーケット
教えてくれたのはアメリカに住む仲の良い友人だった。


家から車で十分ほど走ったところにある
郊外にはよくあるタイプのフリマ。


日本でイメージする野外のスペースではなく
体育館よりもでかい建物の中で行われる。
屋内は数百のブースで仕切られ
素人玄人入り交じって
思い思いの品物を売っているのだ。


その奥の一画に
わざわざログハウス風の外装まで用意して
レコードを売っている夫婦がいた。


見たところ
仕事をすでにリタイアして
週末だけレコードを売って暮らしている感じ。
悠々自適に見えるのは
ふたりのおっとりとしたキャラのせいでもあるが、
なにより売っているレコードが
品質良く
趣味も良く
ちょっとユニークなセンスもあり
しかも安価だということに尽きる。


この店
人気なのだ。


夫婦のセンスのおもしろさは
レコードの仕切り板にも現れている。


「トランスポーテーション」なんて仕切りがあるので
のぞいてみたら
バイクや車など“移動”に関係するテーマのレコードが
ずらっと揃っていた。


あ、このことは前にもここで書いてたっけ。


毎年
夏には3ヶ月ほどフリマを休んで
レコードを買って回る旅をするのだと言っていた。
そして買ってきたレコードをこうやって
毎週末に売って食べてゆく。
うらやましいな。
そんな人生があるのか。


ところが
ある年、
友人から電話で思いがけないことを聞いた。


「おい、あのフリマ
 火事になっちゃったんだ!」


ええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!(この項つづく)


===================================


エレクトリック・ギターの
偉大なるプレイヤーにしてイノヴェーター、
レス・ポールはもちろん素晴らしいのだが、
今ごろになってしみじみと良さがわかってきたのが
メリー・フォードの歌声だ。


単に味わいがあるという意味での良さだけではない。


ぼくがあっけにとられるのは
レス・ポールの要求に応えて
これほど確かなテクニックで
歌をうたい続けたことのすごさだ。


レス・ポールの作り出すギミカルなサウンド
彼女は精緻に考え抜かれたタイミングと音程で
一滴のうるおいを垂らす。


それがなくても
たぶん工業的な意味でギターは発達したかもしれないが
音楽の世界はずいぶんつまらないものになっただろう。


そんな思いをこめて
今日試聴曲を一曲足した。
「スウィング・ロウ・スウィート・チャリオット」だ。(松永良平


試聴はこちらから。