Bob Thiele ボブ・シール / Do The Love

Hi-Fi-Record2010-06-19

 ボブ・シールというと、60年代にジャズ・レーベル、インパルスにジョン・コルトレーンソニー・ロリンズ、チャールス・ミンガスなどジャズ・ジャイアンツの録音を数多く残したプロデューサー。この時代の、この種のジャズ(端的に言えばジョン・コルトレーン)にどうしても頭が上がらないぼくには、畏怖の念というといささか大げさだが、いかにもすごい人だと思っていた。


 「この素晴らしき世界 / What A Wonderfull World」は、その彼がペンネームのジョージ・ダグラス名義で書いた歌だと知ったときには、びっくりした。決してジャズ至上主義的な人ではなかったのか、という素朴な驚きがあった。こんなにポップな歌を残しているなんて。
 ルイ・アームストロングが歌うことになったのも、そういうことだったのかという、納得する気持ちがあった。ふたりは、かねてから長い付き合いがあった。


 そしてもうひとつ驚いたのが、彼がこんなソロ・アルバムを作っていたことだ。楽しく乗れるジャズ・アルバム。


 ぼくの体の中のどこかに、「楽しくないジャズ=偉い音楽」的な、変な思い込みがまだまだ巣くっている。高校生の頃にジャズ喫茶に通っては、わかりもしない難しいジャズを聴いては、知ったような顔をしていた日々の悪しきなごり。
 楽しくない音楽を無理して聴くのはもう止めにしないといけないんだよなあと、このアルバムを聴きながら思った。
 「楽しい」を基軸にし、雑音にはふたをして音楽を聞くことにのみ終始すればいいだけのことなのだが、これがまだまだ出来ていない。(大江田信)



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