Chris Montez クリス・モンテス / The More I See You

Hi-Fi-Record2010-06-23

 「There Will Never Be Another You」の邦題は、「あなた無しでは」。
 英語を読みながら、よく考えてみると、なるほど確かにそういう意味だとわかる。
 すてきな夜も口ずさむ歌もあるだろう、でもあなたに代わる人と出会うことは無いだろうと歌われる。
 たぶんポイントになるのは、未来の時制を示す「will」という言葉。
 異性に向けて、「will」を交えて語りかけるというシチュエーションが、歌のふくらみを作る。



 初出は1942年。数限りないカバー・バージョンがあって、それぞれに妙味があるが、三つ子の魂というべきかどうか、ボク自身にこの歌を初めて意識させた、クリス・モンテスが1966年に発表したアルバム「The More I See You」に収録のヴァージョンが好きだ。
 この歌、実は冒頭のヴァースで失恋の歌であることが明かされるが、多くの場合は歌われない。歌詞部分だけを聞いていると、失恋の歌か、実る恋の歌か、判然としない。それもまたこの歌の面白いところだと思う。



 ウェルナー・ミューラーが1968年に演奏した「あなた無しでは」が、このクリス・モンテス版とよく似ている。手拍子を交えてパーティ・ミュージック風に仕上げているところ、楽天的なリズムをメロディの下敷きに敷くところなどに、二つを結ぶ見えない糸を感じるのだけれど、さて実際はどうだったのだろう。



 大江田が監修・選曲・解説を担当したウェルナー・ミューラーの4枚組CDボックスの発売が目前に。
 そしてこんなイベントが行われることに。ウェルナー・ミューラーを聞きながらおしゃべりを楽しむ会、明日のこととなりました。(大江田信)



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