Arthur Fiedler And Boston Pops Orchestra / Forgotten Dreams

Hi-Fi-Record2010-06-26

 先日のウェルナー・ミューラーを大音量で楽しむ会のおり、「クレア」を聞いていただいた後でお話ししたことを少し。

 
 ポップス・オーケストラでは、楽曲のメロディをきちんとトレースすることが大切な要素だ。ジャズのようにメロディをフェイクしたりしない。丁寧に演奏されるメロディが、まず耳に入る。
 これが時としてポップス・オーケストラをつまらないものとしてしまう誤解を招く要因ともなる。


 メロディをトレースする音楽だから妙味が無いと即断するのは、間違い。
 様々に主旋律と絡んでくるメロディ、対抗するように動くメロディなどが豊かに動く。これは、実はオリジナルのギルバート・オサリバンの歌唱の際には演奏されていない。こうした楽しみが盛り込んであるのが、優れたポップス・オーケストラでもある。これがとてもよくわかるのが、「クレア」だとして聞いていただいたのだった。


 たとえばここでボストン・ポップによって演奏されている「スターダスト」を聞いてみてもそれはよくわかる。
 ヴォーカリストが主旋律を歌っている後ろで、こうしたメロディを動かしながら伴奏することは、これは反則だ。
歌手が歌いにくいし、主役なのか誰なのか、わからなくなる。

 

 メロディとメロディを存分に引き立たせつつ絡んでくるカウンター・メロディの楽しみ。
 編曲者が巧みに埋め込んだもう一つのメロディを見つけ出すこと、これがポップス・オーケストラ音楽の多いなる楽しみの一つだろうとボクは思う。(大江田信)


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