McGuness Flint マッギネス・フリント / McGuiness Flint

Hi-Fi-Record2010-07-02

The Cool School 181 ゴーン・ゴーン・ゴーン


ちょっと前に
とあるアメリカのレコード店
店を閉めるのでお店の在庫いっさいがっさいを
ネット・オークションにまとめて出品するというニュースがあった。


ご覧になった方もあるかもしれない。
LP、EP、SPその他すべてをひっくるめて
数万ドルからスタートという話だった。


枚数で割ればお得なような気もするが
輸送費もかかるし
何よりレコードの品揃えはピンキリ、
しかも、閉店セールとかはやっているだろうから
そこで売れ残ったものだと考えると魅力は薄い。


結局あれは
誰かが入札したのだろうか。


いずれにせよ、
お店が閉まるというニュースは
このご時世どんなかたちでもあまり聞きたくはない。


今ほどネットの情報網が発達していなかった時代、
ぼくらの情報源はモーテルの電話帳だったという話は
前にも書いた。


ただし
電話帳に情報は載っていても
いざ訪ねてみると閉店していたというケースは
21世紀初めの時点でも少なくなかった。


なので
最初に訪ねた店で
こちらのリストを店員に見せて情報を収集していた。
この店はいいね、
この店はダメ、CDばっかりだ、とか
そういうことを聞き出すわけ。


そのなかで
もう閉店してしまった店について
彼らが使う答えは「This store is closing」ではない。


たいていの場合、
短くひとこと、
「gone.」で済ます。


人間の場合にも“亡くなった”という意味で使うが、
お店に対しても使うのだと知ったときは
ちょっとしたおどろきがあった。


だってお店は人間や生き物とは違って無機物だし、
自分の意志でどこかへ行ったりしないじゃないか。


でも彼らは「gone」を使う。
それはお店を単なる建物として見ないで
人間がそこに命を吹込む生き物のように感じているからかもしれない。


「gone.」「gone.」「gone.」。
続けて聞いていると
弔いの鐘が鳴っているような気もしてくる。


これは日本人にしか解らない感覚だろう。
ダジャレだし。(この項おわり)


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「gone.」というテーマで
すぐに思いついたのがマッギネス・フリントの
「When I'm Dead And Gone」。


せつなさのなかにもペーソスがある曲なのだが
日本でシングルカットされたときのタイトルは
ひとこと「死」!


売れるはずもないよねえ。
でも、
今となっては笑えるという意味での
あとから効くユーモアはあるかもね。(松永良平


試聴はこちらから。