George Wyle Orchestra and Chours / Hawaiian Holiday

Hi-Fi-Record2010-07-07

 このアルバムに収録の「島の歌」を聞いていて、ふと面白いと感じたのは、バックのリズムが、シャッフルのロカ・バラードになっていたからだ。男女コーラスが、メロディを軽くフェイクしながらスイングして歌う。3連譜を奏でるのは、鍵盤楽器だろうか。


 このパターンは、ビリー・ヴォーン・オーケストラの「波路はるかに」で用いられるリズムの組み立てと、よく似ている。ちょっと大げさに言えば、ロカ・バラード風にアレンジされたハワイアンということになる。
 何の気なしに聞いていると、気に留めることもないのかもしれないが、なんだかうきうきするなとか、いつも聞いている感じと少し違うなといった印象に、どこかしら寄与しているに違いない。


 ちょっと前まで、こうした本土製のハワイアンがどうもあまり耳に入らなかった。
 本土アメリカ人達が、"ハワイ"を商売する事が許せないという気持ちがあったのだろう。ハワイの音楽家たちが、胸を張って主張している音楽にこそ、真実味があると思っていた。そうした音楽を一生懸命聴いてきたつもりだが、こうしてしばらく時間を経ると、こんどはまた違う感性をもって本土アメリカで録音されたハワイアンが耳に入るようになってきた。


 ひとつには、聞き流しがちなハワイアン風イージーリスニングに、おっと驚く音楽的な仕掛けが組み込んであることを面白く感じるようになってきたのだと思う。この「島の歌」もそのひとつ。
 こうしていくつかの音楽技巧を複合させるセンスは、ハワイで録音されるハワイアンにはあまり見いだせない。ハワイ育ちのハワイアンは、おおむね音楽をシンプルに純化する方向のベクトルが働いているような気がする。(大江田信)


試聴はこちらから。