Jerry Jeff Walker / Walker’s Collectibles

Hi-Fi-Record2010-07-17

 お客様からラズウェル細木の漫画シリーズ、"酒のほそ道"を薦められた。たぶん好きだろうと仰る。
 全巻を買うと十数冊になるということだったので、とりあえず三巻までにしてみた。


 読み始めて、早速、なるほどと思った。
 主人公の岩間宗達が、つぶやくこんなセリフに目が止まったからだ。
 「そもそもオレは大勢で飲むのがあまり好きではない」。
 同感だ。酒はせいぜい二人か三人で飲むのがいい。一人だって、まったくかまわない口だ。
 そういうボクを読まれていての推薦なのかな、と思った。だとしたら、ずいぶんとネタは割れていることになる。ちょっと可笑しい。


 音楽と酒の本だと星川京児が書いた"粋酒酔音" が面白かった。著者の星川とはもう40年近く前からの友人だから、完全に身びいきなのだが。
 酒と音楽を、ひとつのまな板に乗せて正面から扱う。酒も音楽も日常的にして奥深いものだから、書籍もたくさんあっていいことはもちろんだが、ふたつを同時に扱って一冊の本にまとめている同書は、いささか珍しいのではないだろうか。他に類書があるのだろうか。


 "酒のほそ道"には、これはちょっとハマるかもしれない。なんだかんだと理由をつけて飲むのが酒飲みの常なのだが、まだ一巻も終る前に、すでに真似をしてみたいシチュエーションが登場して来た。


 唄っているシンガーをして、こいつは酒のみだなとニンマリしながら想像するときがある。
 パッと思い出したのが、このジェリー・ジェフ・ウォーカー。特にこのアルバムだ。
 ニューヨークでつくったアルバムに較べて、テキサスに来てからつくったアルバムでは、どこかしらねじがはずれている。それがまたいい感じの外れ方なのだが、もしや、それはテキサスという場所の持つ力なのかなと、初めてこのアルバムを聴いた数十年前に思った。
 その謎はまだ解けていない。謎を解きに、ぜひとも何度もテキサスに行って、酔っぱらってみたい。ひと回り、人間を大きくして帰って来たい、と思う。(大江田信)


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