Jerry Jeff Walker / Walker’s Collectibles
お客様からラズウェル細木の漫画シリーズ、"酒のほそ道"を薦められた。たぶん好きだろうと仰る。
全巻を買うと十数冊になるということだったので、とりあえず三巻までにしてみた。
読み始めて、早速、なるほどと思った。
主人公の岩間宗達が、つぶやくこんなセリフに目が止まったからだ。
「そもそもオレは大勢で飲むのがあまり好きではない」。
同感だ。酒はせいぜい二人か三人で飲むのがいい。一人だって、まったくかまわない口だ。
そういうボクを読まれていての推薦なのかな、と思った。だとしたら、ずいぶんとネタは割れていることになる。ちょっと可笑しい。
音楽と酒の本だと星川京児が書いた"粋酒酔音" が面白かった。著者の星川とはもう40年近く前からの友人だから、完全に身びいきなのだが。
酒と音楽を、ひとつのまな板に乗せて正面から扱う。酒も音楽も日常的にして奥深いものだから、書籍もたくさんあっていいことはもちろんだが、ふたつを同時に扱って一冊の本にまとめている同書は、いささか珍しいのではないだろうか。他に類書があるのだろうか。
"酒のほそ道"には、これはちょっとハマるかもしれない。なんだかんだと理由をつけて飲むのが酒飲みの常なのだが、まだ一巻も終る前に、すでに真似をしてみたいシチュエーションが登場して来た。
唄っているシンガーをして、こいつは酒のみだなとニンマリしながら想像するときがある。
パッと思い出したのが、このジェリー・ジェフ・ウォーカー。特にこのアルバムだ。
ニューヨークでつくったアルバムに較べて、テキサスに来てからつくったアルバムでは、どこかしらねじがはずれている。それがまたいい感じの外れ方なのだが、もしや、それはテキサスという場所の持つ力なのかなと、初めてこのアルバムを聴いた数十年前に思った。
その謎はまだ解けていない。謎を解きに、ぜひとも何度もテキサスに行って、酔っぱらってみたい。ひと回り、人間を大きくして帰って来たい、と思う。(大江田信)
試聴はこちらから。