ウェルナー・ミューラーの素晴らしき世界

Hi-Fi-Record2010-07-20

 このほどの「ウェルナー・ミューラーの素晴らしき世界」は4枚組のCD。そのひとつがラテン編だ。


 ラテン編の冒頭を飾るのは「ペピート」。アメリカの作家コンビが書いた作品が、まず中南米でヒット、それがきっかけになって主としてヨーロッパのアーチストに取り上げられてヒットした。
 中南米の作品がアメリカを経由して世界に羽ばたいていくことが多かった50年代のラテン事情から見ると、ちょっとおもしろいケースと思う。


 この「ペピート」には、日本でも複数のカバーが生まれている。そのうちのひとつにザ・ピーナッツ版がある。音羽たかしの訳詞を歌う。どうやらお手本は、ヨーロッパで活躍していた混成ラテン・コーラスのロス・マチュカンボスのヴァージョンらしい。このときのピーナッツ版の邦題は「ペピト」だった。



 で、また話を「ウェルナー・ミューラーの素晴らしき世界」に戻す。
 多くのラテンのコンピレーションの冒頭を飾るのは、もっと著名曲であることが普通のところ、どうして「ペピート」が一曲目なのかというと、これは実はちょっとした裏話がある。その顛末は、本作品のプロデューサーである宮治淳一さんのこちらのブログに詳しい。



 宮治さんはこの"着うた配信ヒット"の様子を控えめに書いておられるが、実はワーナーの洋楽でダウンロード1位の日が続いたと仰っていた。ワーナー・ミュージック・ジャパンの全体としてみても邦洋とりまぜて8位だったそうだ。これを伝えてくれる宮治さんは、だいぶ鼻息が荒かった。


 ウエルナー・ミューラーの「ペピート」を関西テレビで新しく始まる番組のコーナーに使うことを提案したのが、誰あろう、実はこのボクだった。ごく短いイントロにキュートな女性コーラスをフィーチャーされていること、そしてすぐ本編に入るとシンプルで印象的なメロディが繰り返されることなどが気に入って、番組プロデューサー氏に推薦した。
 これがいつのことだったか、もうはっきりとは覚えていないところを見ると、はるか二年くらいも前のことだったような気がするのだが。


 その時点から「ウェルナー・ミューラーの素晴らしき世界」へと向かう、山登りの道が始まっていたのだと思うと、なんだか少し楽しい。一人、ひっそりと聞いていたウェルナー・ミューラーのレコードのメロディが、こうして反響を得て、そしてこうしたCDを制作する端緒になった。
 この道のり、芭蕉になぞって、ペピトの細道とでも名付けてみたい気分だ。(大江田信)
 


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