Dionne Warwick ディオンヌ・ワーウィック / Very Dionne

Hi-Fi-Record2010-07-23

The Cool School 190 時差ぼけとわたし その4


東海岸のとあるレコード屋
猛烈な時差ぼけにおそわれ
ぼくと大江田さんは
レコードを前にしながら気力も体力もうばわれ
へたへたと座り込んでいた。


そのとき
遠くから声が近づいてきた。


「おーい!」


やがてすぐそばまで来た声の主。
顔をあげてみれば
それはぼくの弟だった!


ある年から
ふとしたきっかけで
毎年の夏期休暇を利用して
ぼくの弟はドライバーとして買付に参加している。


その弟が
さっきからぼくたちに声をかけていたのだ。


「ほれ」


彼が差し出した右手には
透明のプラスチック・コップに入った茶色い液体。
その上にはたんまりと白いクリームが。


スターバックスのアイス・カフェモカだった。


「疲れているときは甘いものをと思いましてな」


まさに地獄に仏とはこのことで
そのカフェモカの甘さもさることながら
弟のファインプレーの鮮やかさにより
ぼくたちは元気を取り戻すことが出来た。


暑い季節になるとあの日のカフェモカを思い出す。
今年も
どうやら
そろそろそんな時期が近づいているようで。


ところで
同じ条件で渡米しているはずなのに
なぜ弟は
ぼくや大江田さんのような時差ぼけの睡魔に
おそわれていなかったのだろうか?


弟は胸を張って言った。


「そらあ
 さっきまで車のなかで寝とったからですよ!」


買付には
こういう頬のゆるむ事件も
ときに必要だ。(この項おわり)


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「Time」のつく名曲シリーズ。


そのなかでも
きわめつけの隠れ名曲といえば
ディオンヌ・ワーウィックの「チェック・アウト・タイム」。


ここまで難しい展開で
しかもポップな曲って……。


作曲家バカラック
歌い手としてのディオンヌの可能性を信じたからこそ託せた
だれにでも歌えるわけではないポップス。


されどこれもポップス。(松永良平


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