Joe Henderson ジョー・ヘンダーソン / Hits! Hits! Hits!

Hi-Fi-Record2010-07-24

 「この素晴らしき世界 / What A Wonderfull World」について、こちらに書いたことがある。その際は、作者がボブ・シールだと知って驚いたということを書いたのだが、改めて今になって気づいたことがあった。追記をしたい。


 「この素晴らしき世界 」をポップス・オーケストラが演奏した音源を、あまり見かけない。すぐに思いつくのはマントヴァーニ・オーケストラか、ウェルナー・ミュラー・オーケストラくらいだ。
 残念だな、ポップス・オーケストラで聴きたい曲なのにと思っていたら、ジョー・ヘンダーソンが演奏するこのレコードと出合った。
 やわらかくメロディをトレースして、ふくよかに響かせる落ち着いた演奏だ。これは記憶のリストに加えなければと思いつつ、ふと気づいたのが、イギリスのマントヴァーニにしても、ドイツのウェルナー・ミュラーにしても、そしてイギリスのピアニスト、ジョー・ヘンダーソンにしても、「この素晴らしき世界 」を演奏しているのはヨーロッパ系のアーチストだと言うことだった。


 その訳がわかって、我ながらはっとした。
 サッチモが歌う同曲が発表されたのは、1968年のこと。この時点でイギリスのチャートでは一位を獲得したが、アメリカのチャートでは100位にも入らなかった。アメリカで注目されたのは、1987年の映画「グッドモーニング・ベトナム」に用いられてからで、ここで初めて30位代のリバイバル・ヒットを記録すると、こんどは日本でもCMなどに利用されるようになる。


 ヨーロッパのポップス・オーケストラ系アーチストが「この素晴らしき世界 」を演奏したのは、イギリスでのチャート・インに触発されてのこと。ヒット・ソングの一つとして、同時代のアルバムに加えたのだろう。
 アメリカでヒットした80年代も後半になると、こんどはポップス・オーケストラのレコーディングは、もうほとんど行われなくなっている。英米のヒットの時期の時差のためにアメリカのポップス・オーケストラでは、同曲をレコーディングするチャンスが持たれなかったのだった。
 

 なるほどなあと。これもまた時差の話と言えば、時差の話なのかも。(大江田信)