Henry Mancini ヘンリー・マンシーニ / Driftwood And Dreams

Hi-Fi-Record2010-07-26

The Cool School 191 上に潜る


いつもと比べても暑い夏なのだと言う。
それでもアメリカの夏には
やっかいな湿気がないはずなのだが
今年に限って言えばそれも違った。


じとっとまとわりつく湿気。
今や日本だけじゃなく
アメリカまでがアジア化しはじめたのか?


日本では
30度を超えると暑いという基準がある。
アメリカは摂氏ではなく華氏表示なので
暑いという基準値はだいたい「90度」で言い表される。


「今日は90度行ったね〜、暑いはずだわ」なんて会話が
普通に交わされているわけだ。
摂氏と華氏の違いを知らないひとが聞いたら
お湯でも湧かすのかと思うかも。


そのレコード屋は2階建てで
1階の奥にある階段から上に上がれる造りになっている。


1階をひととおり見終わったので
いざ2階へ。


階段をのぼり終えようとしたあたりで
まるで横に線を引いたかのように
なにかが変化するのを感じた。


むむっ?


不穏なものを感じながら
かまうものかと歩を進めた。


むわっ!
熱!


なんとこの店、
2階には冷房がないのだ。
しかも、もともと屋根裏的なスペースを改造したものらしく、
空気の逃げ場がない。
もともと北のひんやりとした土地柄だけに
この暑さは予想していなかったのだろう。


しかしこのサウナみたいな場所に
たしかにレコードはあるのだ。


覚悟を決めてレコードを見始めた。
一分で汗がじわっとにじみ出す。
二分で水滴が流れ出すのを感じる。
三分目には息が苦しくなった。


こりゃたまらんと階下へ。
空調の効いた1階でぜえぜえと息を大きく吸い込んだ。


もう一度
冷気をからだに貯め込んで2階へ。
数分後、
息継ぎをするように階下へ。


そんなことを繰り返していたら
なにか似たような光景を思い出した。


これって
海中に素潜りで宝物を穫りに行くのと似てるかも。


そう思ったら
なんだか海女さんにでもなった気分がして
すこし楽しくなってきた。
この日
下から上に何度も潜りながら
ぼくは結構な収穫を得た。(この項おわり)


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ヘンリー・マンシーニのファースト・アルバム。


自分でもコメントに書いているが
「ネイキッド・シー」あたりには
深い海の底から響いてくる音楽を聴いている気がしてくる。


このオリジナル・ジャケも
あまり見かけない。


上にせよ下にせよ
深く潜らないと見つからないアルバムだと思う。(松永良平


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