The Gunter Kallmann Choir / Wish Me A Rainbow  

Hi-Fi-Record2010-07-29

 ここ数日の陽射しの強い午後とは違って、今日は雨。それも強い風を伴う横なぐりの雨が降っている。ハイファイの目前、明治通りケヤキの木が、大きく上下に枝を動かしている。


 雨の日にはもしやビリー・ホリデイが似合うかもしれないとアルバムを聴き始めたら、確かにホントによく似合った。なんだか急に体がズシンと思たくなった。
 聞いているうちに思い出したのが、テレビ映画「傷だらけの天使たち」で、岸田今日子が登場するシーンに決まって流れていた音楽のこと。
 調べてみると、ポーランド生まれの女優、ポーラ・ネグリがドイツ語で歌う「マヅルカ」だった。さっそく聞いてみる。1935年のドイツ映画の劇中歌だそうで、これがまたなんとも憂鬱な気分になる。高踏的というか、耽美的というか。


 ドイツ語の響きのためなのかもしれない。もともと時代がかっている歌が、何倍にも時代がかった様相を帯びる。


 第二次世界大戦中のドイツには、駐留米軍の兵士や軍属のための放送を行うラジオがあった。相当に広く国内をカバーしていたようだ。日本におけるFENに相当するものと考えていいのだろう。駐留軍関係者に向けて放送された音楽番組を熱心に熱心に聞いていたドイツ人の若者達も、少なからずいたものと想像して良いだろう。
 このところ少し調べ始めているのだが、ドイツのダンス・オーケストラの歴史を考えるに際しては、ラジオの影響も含め戦時下と戦後のアメリカ軍占領を抜きに出来ない。ちょっと極端な言い方だが、1960年代を迎えるくらいまでのドイツは、アメリカ音楽文化の飛び地であるかのように見えてくることもある。


 そういえば、もともとドイツ語で歌唱していたコーラス・グループが、英語を用いて歌うようになって起きる、目覚ましいばかりの聴こえ方の変化をどう表現すればいいのだろう。
 なんだか急に目前の曇りがとれたような晴れやかな気分になるのは、多少とも英語に慣れたこちらの耳のせいなのだろうか。
 ドイツ語歌唱アルバムには、なかなか手が出ないギュンター・カルマンのクアイア・コーラスものだが、英語となると急に親しみを感じてしまう。急に輝いて聞こえてきてしまって。(大江田信)


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