Edmundo Ros エドムンド・ロス / Broadway Goes Latin

Hi-Fi-Record2010-07-31

 エドムンド・ロスのヴォーカルがおもしろい。気があるんだか無いんだか、鼻歌気分でお気楽に歌う。にこやかな表情をしながら歌入れに臨んでいそうな、楽観的な空気が流れてくる。どこまで真剣に歌おうと思っているのか、よくわからない。それでいて、切れ味のいいリズムを奏でるバンドのサウンドと、バッチリ合っている。軽みの極みのヴォーカル芸だと思う。


 エドムンド・ロスは、自らの名前を冠したラテン・オーケストラのリーダーだ。1950年代には、ロンドンのリージェント・ストリートに、エドムンド・ロス・クラブを開店すると、オーケストラを出演させて演奏している。経営者としても優秀だったのだろう。


 アルバムはラテンもの。とはいえ、一通りラテンのレパートリーを演奏した後は、映画音楽や音楽による世界巡りなどへと転じていく。方法としてのラテンを用いた企画アルバムとなる。
 聞き知ったメロディがラテンで演奏されると、あら、こんな風に聞こえてしまうという驚きを楽しんでいると、ふとした合間にエドムンド・ロスの声が流れ出す、そんな仕掛けになっている。


 なんとなく聞いていると、どのアルバムのどの曲で歌っているのかをすぐ忘れてしまう。どこかで気合いを入れて、エドムンド・ロスのヴォーカル曲のリストを作ってみたい。密かに自分用のミックス・テープを作ってみたい。


 誰か、どこかに似ている歌いかたをする人がいるなあとずっと考えていたら、思い出した。浜口庫之助さんだった。


 ひとまず、ぜひエドムンド・ロスの「マイ・フェイヴァリット・シングス」をお聞きください。(大江田信)



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