V.A. / All In A Life Time : The Songs Of Bob Russell

Hi-Fi-Record2010-08-03

The Cool School 195 兄弟の誓い


おもしろいことに
その西海岸の小都市では
一本の道を挟んで
兄と弟がそれぞれのレコード店を営んでいるのだという。


仲違いしているわけじゃない。
お互いに趣味が違うから。


兄は
昔ながらの何でも屋。
クラシック、ジャズ、ロックから
ワールド・ミュージックまで
中古レコードならなんでも売りたい。


弟は
オーディオ・マニア。
中古オーディオの修理も請け負う。
もちろんレコードも売っているのだが
好きなのはクラシック・ロック(60〜70年代の王道ロック)。
名盤が壁をずらっと埋めていた。


この兄弟
店は別々だが
足りない部分を補いあいながら
商売を続けてきたらしい。


どちらかが用事で出かけなくちゃならないときは
残った方が
二軒の店を掛け持ちする。


どうやって掛け持ちするかと言うと
出かけた方の店を閉めておいて
ドアに「用事があるひとは向かいまで!」と書いた札を掲げておく。


そうすると
たとえば弟の店の客が
「オーディオ運んできたんだけど」とか言って兄の店に現れ、
兄は自分の店にいるお客(すなわちぼくたち)に
「すまんがちょっと向かいまで言ってくる」と言って
道の向こうへ駆け出していくのだった。


そんな光景を微笑ましく覚えている。


残念ながらこの通りを挟んだ兄弟の商売は
年々の不況のせいか
ある年を境に兄の店一軒だけになってしまった。


オーディオとクラシック・ロックは
兄の店に吸収された。


結局
弟の荷物を兄が責任もって引き継いだわけだ。
「ヒー・エイント・ヘヴィー、ヒーズ・マイ・ブラザー」という
ホリーズのヒット曲を思い出す。
邦題は「兄弟の誓い」だったか。


ところで
この兄の店で
ぼくたちはとんでもないディスカウントの条件を出されたことがある。
この次はその話をしよう。(この項おわり)


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ホリーズがヒットさせた「兄弟の誓い」は
作詞家ボブ・ラッセルと
作曲家ボビー・スコットの共作。


ボブ・ラッセルは
ナッシュヴィルの作曲家ボビー・ラッセルとは別人で
1970年に亡くなっている。


古くは
「ブラジル」や「フレネシ」といった
ラテン・スタンダードにも英語詞をつけた重要人物。


「兄弟の誓い」は
彼にとって最晩年のヒット曲だった。


彼の死を惜しんで制作されたこのプロモーション盤には
スピリット・オブ・アスという
ゴスペル風のロック・グループの歌と演奏で収録されている。


これはこれで感動的。(松永良平


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