Jimmy MacDoanld ジミー・マクドナルド / Honky Tonkin’
「家具の音楽」と題する曲を、1920年にエリック・サティが書いている。
自己主張することも無く、生活にそれとなくとけ込んでいる家の中の家具のように、格別の意識を注がれることのない音楽を作りたかったサティ。
初演の演奏会で、休憩時に演奏される音楽を聴かないようにとパンフレットに記したにもかかわらず、劇場の様々な場所に配された演奏者による演奏が始まると、聴衆は会話を止めて音楽に集中したという。
と、ここまで解説を読んだ上で音楽を聴く。
もしもその休憩時間の会場にいたら、おやおや、第二部が始まったと思ってそそくさと席に着くだろうなあというのが、僕の感想だ。それなりに派手だし、なんだかちょっと切羽詰まったものを感じさせる響きがある。
「家具の音楽」という考え方そのものは、とても面白い。
没我とか、無我とか、こうした日本語を持つ日本人には、思いのほか解りやすい概念とも思う。
ピアノ曲のジムノペディのほうが、この考え方がより具現化されているような気がするのだが、いずれにしてもサティの音楽全体を通底する考え方として「家具の音楽」があったようだ。
それは、サティが酒場でピアノを弾く仕事をしていたからだ、と指摘する声もある。
20世紀の初頭。酒場とピアノ。
アメリカはというと、こんな音楽が流れていたはずだ。(大江田 信)
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