Mary Hopkin メリー・ホプキン / Earth Song

Hi-Fi-Record2010-08-25

 この10日程まえから蝉の声を聴くようになった。ハイファイでのことだ。東京の郊外にある自宅で蝉の声に気づくよりも数日前に、ハイファイの周りで蝉のなく声が耳に入った。
 去年もこうだったわねと言われて、おもわず明治神宮の森が近いからかなと、こたえる。 


 現在建て替え中のキャピタル東急ホテルでは、招聘元のウドーが定宿にしていたこともあって、公演後のアーチストの姿をよく見かけた。バー・スツールに座って遅い夕食を食べていたブライアン・アダムスや、ロビーでファンと思しき女性と熱心に語り合っているエリック・クラプトンの姿が印象的だった。


 いちどこのホテルでピーター、ポール&マリーをインタビューしたときのこと、インタビューの現場にピーターがなかなか来ない。宿泊先として利用しているスイート・ルームの一画を用いてのインタビューだったから、よほど遠くまで外出していない限り時間にはインタビューを始められると思っていたので、ちょっと面食らった。
 すでに同席していたポールが、ピーターはジョギングに行っていると説明してくれた。公演先のホテルで時間があれば、ピーターは持参のシューズを履いて、ひとっ走り出かけるらしい。


 しばらくしてピーターが戻ってくる。
 やあ、ひと回り走って来たんだ。さわやかな笑顔だった。シャワーでも浴びて来たのかもしれない。ポリスがいっぱいだなあと笑っていた。
 それにしても永田町のまん中の立地だ。どこをどう走ったのだろう。走るのにふさわしい道があるのだろうか。緑につつまれている道があるのだろうか。


 ハイファイがある渋谷の街はというと、決して緑が多いとは言い難い。
 考えてみれば、東京の都心部になればなるほど、神社仏閣のおかげで緑が確保されているのかもしれない。ハイファイ前の並木の緑には、いつもとてもありがたい思いをしているが、これも考えてみれば明治通り明治神宮の参道だったことからも設けられた並木だ。
 そのほかとなれば近所の公園、幼稚園や学校の中庭などに植樹が目につくくらいだろうか。


 巨木の緑というと、このジャケットを思い出す。
 ダブルジャケットの内側に配された写真も見事だ。
 タイトルの妙も加わって、知らず知らずのうちに巨木の下で演奏される音楽のように思い込んでいたのだが、改めて聴いてみて当らずとも遠からずと思ってしまった。
 裏ジャケットの写真もいい。B面の最後の2曲の流れが、写真と呼応している。(大江田信)


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