Jan August ジャン・オーガスト / Latin Rhythms

Hi-Fi-Record2010-08-28

 どうしてなのか、ずっと不思議なのだが1930年代から40年代にかけてのアメリカ、特にニューヨーク界隈ではラテンがはやっていた。ほんの少しだけ正確に言えば、ホテルのラウンジ・ミュージックやダンス・フロアーで盛んに演奏され、ラジオでも中継された。楽しんで聞いていたのは、ラテン諸国からの移民ではなく、いわゆる白人たちだった。
 

 ジャン・オーガストも、40年代から50年代にかけてラテンを多く演奏して注目を浴びた人物だ。この時代の大物のひとり、ポール・ホワイトマンやファーディ・グローフェのオーケストラと共演したのち、ラテンのリズムをバックにピアノ・ソロを演奏するスタイルで成功した。ピアノは独学だったらしい。明るく明快なタッチがトレード・マーク。なんとなくユーモラスな感じもある。キャヴァレロやロジャー・ウィリアムスなどのロマンチックで流麗なピアノとは一線を画している。


 コメントで触れられている「Mambo Is In The Air」や「Chiqui Chiqui」がとってもよくて、お気に入り。軽い気分。


 このアルバムの翌年、58年に彼は「ミザルー」を録音している。これまたラテンのリズムをバックにした演奏なので、そうと気づきにくいのだが、「ミザルー」はギリシャ音楽である。ギリシャ語の表記もある。「Μισιρλού」とこんな具合。
 後年にディック・デイルがエレキ・ギターで演奏して、そのヴァージョンがよく知られているが、初録音となるとジャン・オーガストである。どうしてまたこのギリシャのメロディを演奏することになったのか、これまた謎だ。(大江田 信)


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