Brenton Wood ブレントン・ウッド / Gimme Little Sign

Hi-Fi-Record2010-09-07

「B面は政治なんだ」


これはハイファイのボス、大江田さんから最近聞いた名言。
シングル盤にまつわるあれやこれやをここで書いていることもあって
元レコード会社勤務の履歴がある大江田さんに
いろんなことを訊ねたりしている。


もちろん日本のレコード会社事情と
アメリカの事情はいろいろ異なる面も多い。
ラジオ局の数だって全然違うし、
日本ではプロモ盤だけ作って
そのプロモーションが成功しなければ
レギュラー盤は作らないなんてことはなかったそうだ。


ただ
おそらくこれは共通していると言えるのは
シングルのB面に入る曲には
いろんな思惑や駆け引きが交錯しているという点。


何故なら
A面曲が大ヒットしてシングルが売れれば
たとえどんな曲が入っていても
たとえ一回もおおやけにプレイされることがなくても
B面曲の作者にはA面と同額の印税が舞い込んでくるからだ。


そして
とりわけアーティストの意志というものが
重くとらえられるようになる以前の60年代には
そのB面をアーティストやシンガーが決めることは
稀であっただろう。


ヒット確実なシングルであれば
当然プロデューサーやレコード会社の重役たちは
自分たちとかかわりの深い人選や
音楽出版社の曲をB面にしようとするに決まっているという。


実際
それに近い話は
日米両方の音楽関係者からぼくも結構聞いてきた。
業の深いポップス・ファンの間では
とっくに常識のような話なのかもしれないが、
あえて書いたのは
「B面は政治だ」という大江田さんの表現がおもしろかったからだ。


闇のなかでうごめくもやもやとした事情に
ふと光を当てるのは
そんな言葉の力だったりする。
そういうものをぼくは“ポップ”だと感じる。


レントン・ウッドの名曲「Gimme Little Sign」。
この曲のB面は
日米では違う。
これも政治か。
両国ともにイイ曲ですけど。


4、5回まわってニャンと鳴く その7 松永良平