Karon Rondell / You Don’t Need Me For Anything Anymore

プロモーション用のシングル盤は
アメリカ中にあるあちこちのラジオ局に配られる。

膨大な量のシングルを整理するために
ラジオ局が効率的に利用していたのが
レコードの中央のラベル部分。

レコードを入れておくスリーヴに書いておいてもいいのだろうが、
誤って袋を取り違えることもあるかもしれない。

ラベルに必要な情報を書いておけば
盤そのものに刻印したことと同じ。
とりあえずは安心なのだ。

そして
時を超えてぼくたちがそんなシングル盤を扱うとき
何気ない書き込みが
思いがけないストーリーを語りかけてきたりする。

そのシングルが
ラジオ局にやってきた日付を記したもの。
簡単な感想や曲調についての説明を加えたもの。
「この面をかけてはいけない」という意味での
大きなバッテンが書き付けてあるものもある。

このキャロン・ロンデルのシングルにも
いくつかの書き込みがしてある。
ひときわ目立つ「PICK」という文字は
この曲をプッシュという意味だろう。

アメリカのどこかのラジオ局で
この曲が「今週の推薦曲」になって流れた日々があったのかもしれない。

何気なく見過ごす
ラベルの書き込みも
とたんにひどく愛おしく思えてくる。

4、5回まわってニャンと鳴く　その11　松永良平