Jan August ジャン・オーガスト / Latin Rhythms

Hi-Fi-Record2010-09-15

 ギタリストのディック・デイルが演奏したことで知られる楽曲「ミザルー」がギリシャに起源を持つものと、このアルバムのコメントを読んでいて、改めて思い起こすことになった。


 アメリカのウィキペデイアを読むと、すでに1927年からギリシャアテネでミカリス・パトリノスのバンドによって演奏されていたこと、そしてジャズ風にアレンジしたギリシャアメリカ人のニック・ロウバニスが、1941年に自作品として登録したとある。


 この記述には、またその先があって、ニック・ロウバニスの著作権登録に際して抗議が行われなかったので、そのままに確定しているといった内容のことが書かれているし、ギリシャ国内では、ミカリス・パトリノスの作品とする認識もあるとも書かれている。
 JASRACのデータ・ベースではニック・ロウバニスの名前が登録されている。
 

 仮にニック・ロウバニスが元々あるメロディを自作品として登録したのだとしてもその時には既に民謡に近いほどに広まっていて、作曲家が不明な状態だったのかも知れない。アメリカ国内のギリシャ人コミニュティで伝えられていたメロディというから、そうした維持のされ方があってもおかしくないとは思う。彼に好意的な訳でもないのだが。
 それにしてもだ、「ロード」1曲が未だに年間1200万円も稼ぎ出しているというニュースを見てしまうと、「ミザルー」の場合はどうだったのだろうと想像をたくましくしてしまうのだが。

 
 ギリシャ・オリンピックの閉会式のエンターテイメントで、ギリシャのディーヴァ、アンナ・ヴィッシが歌う「ミザルー」の映像を見る。監修の大変な熱狂ぶりに、ギリシャでのこの曲の根付き方の一端がうかがえるようだ。

 
 その「ミザルー」を弾いてポピュラーにしたのが、このジャン・オーガスト
 彼のラテン・ピアノ・アルバム。ころころと転がる音色が楽しい。これ見よがしの風を吹かさず、気取りの無い演奏がいい。


 1946年の「ミザルー」のヒットを契機に、ジャン・オーガストはフランキー・カールやカーメン・キャヴァレロに次ぐ人気ピアニストになったそうだ。
 ボクが聴いたジャン・オーガストの「ミザルー」は、1959年録音のヴァージョン。そういえば、思いっきりラテンの意匠が施されていた。(大江田信)
 



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